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市民寄席に行きました

市民寄席に行きました_e0066369_21434087.jpg京都で定期的に開催されているイベント、「市民寄席」に行って来ました。今回の演者と演目は笑福亭喬若「七度狐」、桂つく枝「堪忍袋」、笑福亭仁智「めざせ甲子園」、桂福団治「百年目」の4人。めざせ甲子園は新作落語ですが、その他の3つは古典ネタです。市民寄席は大体隔月で開催されているのですが、お正月の時期は噺家さんも一番忙しい時期だからなのか、1月と2月の公演はなく、3ヶ月ぶりの開催でした。久しぶりの公演ということもあり、折からの(静かな)落語ブームのせいもあってか、客席は満員御礼状態。でも、やっぱりたくさんのお客さんと一緒に笑いながら見るというのが一番ですね。

4人の中で、私にとって出色だったのは桂つく枝さん。今年が高座デビュー15周年とのことで、私が落語を良く見に行っていた時期にはもうデビューされていたのですが、つく枝さんの高座を見るのは今回が初めてでした。まくら(落語の本筋に入る前のさわりの部分)の時点でお客さんのハートをがっちりつかんだのが、自分が客席に居ても手に取るようにわかりました。堪忍袋というネタは知っていたので、サゲ(オチ)も最初から分かっていたのですが、もうそんなこと関係なく面白い! 昔、枝雀師匠の独演会を見に行ったときにその表情と言い回しに、かたときも目が離せなくなったことを思い出しました。主な登場人物は年中ケンカばかりしてる夫婦と同じ長屋に住む面倒見のいい隣人(いつも2人の仲裁にはいっている)という落語では定番のパターンなのですが、特に奥さんのセリフをやるときは最高でした。ちょっとぽっちゃりしたつく枝さんが、会場の熱気とライトの熱もあってか、大汗かきながら夫婦喧嘩を演じるとものすごくリアルで、簡単な小道具以外は何も無い高座なのに、背景に長屋の部屋が見えてくるみたいで、どんどん引き込まれました。お客さん全員が彼の動きとセリフに夢中になっていて、「ああ、もっと、もっと笑わせてくれー!」というみんなの気持ちが会場に充満しているのをビンビン感じました。みんなが笑う準備が出来ているのですから、もう何をやっても相乗効果で面白い。ケンカの途中で思わずつく枝さんが噴き出しながら喋ってしまう部分があっても、それさえも演出になってしまっていて面白いのです。笑いながら涙が出てくるなんて、本当に久しぶりの経験でした。「堪忍袋」はさすがにつく枝さんの十八番というだけあってこれ以上ないほど笑わせてもらいましたが、他に得意なネタとして「ちりとてちん」(これも表情の面白さが命の爆笑ネタ)も挙げておられます。次回見るときは「ちりとてちん」の時に行こうかなーと思いつつ、「堪忍袋」もぜひもう一度見たい!と悩めるところです…。
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これが桂つく枝さん。写真はご本人のブログからお借りしました。いい顔されてますよねえ。

そして、トリの福団治師匠はやっぱり「うーむ」と唸ってしまうほどのすごい貫禄でした。比較的長めの演目ということもあって、まくらもほとんど無しで、いきなりネタに入られましたが、それでもすぐに引き込まれてしまったのはさすが。大きな商店の番頭と旦那が出てくる話なのですが、2人の演じ分けがすごい!特に旦那を演じるときの口調と表情は、この人本当に落語家?俳優とちゃうの?と思ってしまうほど。最後は、爆笑というよりも結構シンプルでさらりとキレイに決まるサゲなのですが、聞いていてものすごーい安心感でした。 客席からも、最後の拍手だけでなく、ネタの最中にもところどころ「はあーっ…」と感嘆のため息が聞こえていました。

落語の面白さって何?といわれるとやっぱり漫才と違ってネタそのものの面白さで勝負というよりは、演者の力にかかっている部分が大きいところがあると思います。漫才と比べて、ネタそのものにはオリジナリティーはないので(古典だけでなく、新作も定番になっているものが多いです)逆に同じネタを演じたときに、噺家さんの個性が際立って見えるんです。ちょうど、クラシックの名曲を演奏したときに、演奏者や指揮者によって全然違ったイメージになってしまうのと同じですね。また、落語自体も、もちろんそれだけで面白いのですが、寄席で落語を聞いて、周りの観客と、そして演者と一体になれたときの高揚感といったら最高の醍醐味だと思います。これを映画館で味わうのはなかなか難しいのではないでしょうか。それに映画館だと周りの声とかって、結構気になったりするものなんですが、寄席だとあまり気にならないどころか、逆にそれさえも楽しめてしまったりするから不思議です。今回の寄席でも、2つぐらい隣の席に、すごいリアクションの大きな人がいて、いちいちネタの中のセリフに「へえー」とか「ふんふん」とか反応しているのですが、あまり気にならなかったです。寄席って、関西ではしょっちゅう開催されているのですが、残念ながら平日の夜とかが多いので行けないものもたくさんあります。でも、これからも都合が合うイベントを見つけたら、ちょくちょく行ってみようかなと思っています。
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開演前の高座をパチリ。もちろん演じている最中は写真撮影禁止だったので写真はこれだけです。
by cita_cita | 2006-03-22 22:31 | お笑い
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