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「ナビィの恋」

「ナビィの恋」_e0066369_18485683.jpg南回帰線」のitakaさんが書いていたのを見て、「そうだ、まだこの映画見ていなかったな」と思いついたように借りてきて見たのだけど、今となっては、「なんでこんな素敵な映画を今まで見なかったんだろう!」というのが感想。

ナビィは「ちゅらさん」の平良とみが演じる79歳のオバアの名前。えらく可愛いあだ名だなと思ったら「なべ」さんを沖縄風に呼ぶとナビィになるのですね。そしてナビィの「恋」のお相手は同じ島出身のサンラー(三郎)。舞台となるのは沖縄本島から船で1時間の粟国島。ナビィの孫娘である奈々子は島を出て東京で働いていたけれど、都会の喧騒に疲れて島に戻ってきます。奈々子を迎えに来た恵達オジィとナビィおばぁと一緒に島の生活が始まります。でも、奈々子と同じ船で戻ってきたサンラーの存在が事態を以外な方向へ…。実はサンラーとナビィは、若い頃に周囲の反対に会い離れ離れになった初恋の相手なのです。サンラーの60年ぶりの登場に、ナビィの心は揺れ動き、ついに駆け落ちを…。と書くと、「そんなアホな」とありえない夢物語のように聞こえるのですが、この映画を見ているとなんだかそれもありかなと思えるのが不思議。 もちろん奈々子の恋の話も一緒に展開するのですが、全ての物語はナビィとサンラー、そして2人を見つめ続ける恵達を中心に展開していきます。

「ナビィの恋」_e0066369_18492340.jpgこの映画はミュージカルのように、あらゆる場面に音楽がちりばめられています。それは恵達が縁側で三線を鳴らしながら歌う沖縄民謡であったり、島の女性レイコを追いかけて遥かアイルランド(ナビィはアイルランドが覚えられなくてあいしてるランドだと呼んでいる)からやってきたオコーナーが演奏するアイルランド民謡であったり、レイコが歌うオペラ風沖縄民謡(あるいは沖縄風オペラ音楽)であったりします。恵達オジィを演じるのは、「沖縄のジミヘン」の異名を取る登川誠仁(のぼりかわせいじん)。1930年生まれ、今年76歳の現役ミュージシャンで、映画の中でもラストで超人的なカチャーシー早弾きを披露しています。このときは三線でなく六線でしたね。itakaさんも書かれていましたが、この映画の影の主役はやはり恵達でしょう。あのとぼけたセリフ回し、たまに飛び出す英語やちょっとエッチなつぶやきが最高です。でも何より恵達の唄う沖縄民謡、これは三線をかじり始めた身にはめちゃめちゃしびれます…。三線習う前に見たらそうでもなかったかもしれないのですが。粟国島は沖縄本島周辺の島なので、下千鳥、国頭ジントーヨーなど沖縄本島の民謡がたくさん出てくるのですが、映画の中ではフルに演奏されることは少なく、場面転換によって途中でフェードアウトしてしまったり、おじいが演奏をやめてしまったりするのでサントラ版でちゃんと聴いてみたいと思います。いつか国頭ジントーヨーを歌えるようになりたーい!と思いましたが、とりあえずの目標は十九の春を楽譜見ずに全部唄いきることかな…。

ナビィは奈々子を迎えにいったときは優しいおばあちゃんだったのに、サンラーと会った日から、19歳の頃の恋する乙女に戻ってしまったのがすごく可愛らしかった。特に嵐の夜に、ロウソクの明かりでサンラーへの想いを綴った手紙を書くところなんかは思わずゾクゾクしまいました。サンラーと小さな船に乗って「あいしてるランド」に駆け落ちするところを奈々子が必死で追いかけてきて「オバァ行っちゃだめ、オジィはどうするの!?」と言われたときに「(オジィは)まだ若いから大丈夫さー」と答えたナビィ。ナビィとオジィは多分9つぐらい年が離れているから、オジィは70歳ぐらいでしょうか。70歳のオジィをつかまえて「まだ若い」というのもどうかと思いますが、79歳で駆け落ちしたナビィにとっては、言葉のあやなどではなく、70歳はまだまだ若いのでしょうね。

この映画を見る人が沖縄、特に離島に行ったことがあるかないかで面白さが全然違ってくると思います。夜、月明かりの中、舗装されていない砂の道をショートパンツにサンダルでふらふらと無防備に歩くときの時間が止まったような感じ。沖縄の家の中、開け放した四方の引き戸を風が通り抜けていく感じ。その部屋の中でひんやりした畳にタオルケット一枚かけて昼寝して、ふと外を見たとき、目がくらむほど白くまぶしく地面に反射する太陽の光。自転車を草むらに停めるとき、スタンドなんて使わず、もちろん鍵もかけずその辺に転がしておける安心感。映画の一瞬一瞬にも「ああオキナワ!」と思わせる場面が出てきます。オバァがいなくなるのではと心配して後ろをつきまとう奈々子に「トイレに行くのさぁ。」とナビィがつぶやいて入った離れのトイレ(というより便所)でさえ、実際に島で同じようなトイレを懐中電灯片手に使った私にとっては「そうそう、これこれ」と繰り返し見てしまう場面なのです。

もし、前にこの映画を見てピンと来なかったという人には離島に行く機会があればその後もう一度見てもらいたなぁ。そして、この映画を見た後で三線を習った人にもぜひ…。実はこの映画、録画したときに最初はなぜか字幕が抜けてしまっていてウチナーグチで喋る部分はほとんど私には理解不能でした。「アガリカナグスクの」とか「ニービチが」とかしか聞き取れない(笑) 字幕が必要な邦画ってのも貴重なのではと思います。
by cita_cita | 2006-03-13 22:25 | 映画
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