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「チェンジリング」

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この映画は凹んでるときには見るもんじゃないなぁというのが正直な感想。だって、全然救いがないんだもの。しかも実話だときてるから、よけいに落ち込んでしまう。子供を持つ母親がみたら、もっともっと辛いんじゃないかなぁ。

1920年代後半のロサンゼルスで9歳の息子が行方不明になり、5ヵ月後に警察に保護されて戻ってきたものの、これが全くの他人。母親は「この子は違う。私の息子を探して!」と必死で訴えるが、警察はそれを相手にせず、それどころか彼女が警察のミスを主張すると、権力に盾ついた精神異常者とでっちあげて病院に拘束する。それでも彼女は息子はまだどこかにいると信じて探し続けるが…という内容。で、これがほぼ全部実際に起こった出来事と知って見ているとなおさらぞっとしてしまう。

自分はひとつもおかしくないはずなのに、どんどん間違った方向に事態が展開していって…どうしてこんなことになってしまったんだろうと見ている側も憤りを感じずにいられない。クリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)はシングルマザーだから、同じ立ち居地で一緒になって怒り、悲しみ、支え合える夫がいない。もし、ブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)が手を差し伸べてくれなかったら…一体どうなっていたんだろう。きっとこの出来事も誰にも知られないまま歴史に封印されてしまったのではないだろうか。

そんな中で、ちょっとでも救われた場面を強いて挙げるならば、クリスティンとブリーグレブ牧師の努力が実り、警察によって精神病院に不当に拘束されていた女性たちが解放された場面とか、ジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)の言い分が裁判で通らず、弁護士に言い負けてみんなが拍手する場面とか、あとは最後にクリスティンが「Hope(希望)を見つけた」と言うところぐらいか…。

でも、アンジェリーナ・ジョリーの迫真の演技は立派だった。あと、1920~30年台のロサンゼルスの町の風景や登場人物の服装、警察や病院の重苦しい雰囲気も含めて、全体の映像の重厚さは素晴らしかった。最近のCG全盛の映像を見慣れてしまい、アバターの世界にどっぷりはまってしまった自分にとっても、これぞ「THE 映画」という感じですごく見ごたえがありました。

イーストウッドは、監督としてこの映画を通じて何を一番伝えたかったのかなと考えてみたのですが…やはり実際に起こったことを美化もせず、大げさに脚色もせず、事実をありのままに伝える、それをどう受け止めるのか、あとは観客に委ねるということなのかもしれないですね。それは、「硫黄島からの手紙」を見たときにもそう思ったことですが。

この映画の題材になっているのは、今から80年も前の事件だけれど、権力のある側が自分たちの身を守るために事実を歪めてしまうことの怖さや、それに巻き込まれる弱者がどう守られるべきかということを改めて考えてしまう。ちょうど今、足利事件の菅家さんの報道を見ているから、決してはるか昔のことというわけではなくて、何かがひとつ間違うと、こういうことが実際に日本でも起こりうるんだなあって思う。それから、子供を誘拐されたまま、消息が分からずただ延々と待ち続けるという意味では、北朝鮮の拉致被害者のご家族のこともふっと脳裏によぎりました。

すっごくいい映画だったけど、もう一回見るのはだいぶ先でいいかな…。だって、見てる間もずーっとしかめっ面で見ないといけないし、見終わった後はどーんと疲れてしまうんだもん。今はなんか「プラダを着た悪魔」とか「チャーリーズ・エンジェル」とか、そんなのを見たい気分(笑)

あ、そういえばジョーンズ警部ってオードリー春日に似てますね。特に目と口元の動きとか。
by cita_cita | 2010-02-13 12:20 | 映画
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