<   2006年 01月 ( 25 )   > この月の画像一覧

「旅をする木」 星野道夫

e0066369_1645466.jpgこの本が最初に出たのが今から10年前。私がこの本を初めて読んだ当時、星野さんはまだ生きていました。その翌年、1996年の8月にカムチャッカ半島で取材旅行中にヒグマに襲われて、星野さんは亡くなりました。それは彼が出演するはずだった映画「地球交響曲(ガイアシンフォニー)第三番」のクランクインのわずか1週間前でした。主演男優を失ったこの映画は、そのまま撮影が続けられ、彼をとりまくエスキモー(差別語という人もいますが私はこの呼称に尊敬をこめて、あえてこう呼びます)やその他アラスカの仲間たちが星野道夫という人間を語るという形式に変更され、完成しました。映画は素晴らしい作品で、それについてもまたいつか紹介したいと思いますが、今日は10年ぶりにこの本を読んでみて感じたことなどを書いてみようと思います。

まず、やっぱり同じ本でも読んだ時の自分の年齢、それまでの経験、その時置かれている状況によって印象が変わるのだなということを改めて実感しました。失礼ながら、正直、この本、こんなに心に残る本だったっけ...と思ってしまいました。前に読んだときも、いい本だなと思ったのですが、何というか、あまりにも自分の世界とかけ離れているというか、冒険家であり世界を股に掛けるカメラマンの特別な体験談のようにしか受け取れなかったのです。でも、今回読んでみて、星野さんの書いている一言一言がもっと深みを持って訴えかけてきました。当然ながら、彼の行動範囲や経験の広さというのは、今の私にとっても全く比べものにならないし、星野さんは本当に偉大な人物です。でも、アラスカという第二の故郷で出会った様々な人たちに対する彼の思いや、息を呑むようなアラスカの大自然に接するときの彼の気持ちの高揚に妙な親近感を覚え、今はそうでなくても、いつかこう感じられるような人間になりたいなと何度も思わされました。

この本を読んでいると、星野さんがいかに人との繋がりを大切にしていたか、そしていかに彼らに大切にされていたかがよく分かります。そして、自分のそれまでの生活と全く違う世界や、全く違う価値観と出会ったとき、どう対応するのか。「自分が知っている生活だけが全てではないのだ」と目からウロコが落ちた後、日常生活の中で自分がどう変わっていけるのか。そういったことについて彼の思うことがたくさん書かれています。これは私にとっても一生のテーマにしていきたいことです。

アラスカは私にとっては非日常の象徴みたいな場所だけど、そこに住む星野さんにとっては日常でもありました。でも、彼はいつもアラスカの日常の中にはっとするような瞬間を発見し、ドキドキするような感動を味わっていました。これは誰にでもできることではないと思います。私は、旅行をしている時以外は毎日決まった時間に会社に行って、パソコンに向かい、地下鉄で家に戻って同じ布団で眠るという生活を繰り返しています。そんな毎日の中で、たまに仕事でストレスをためたり、家族と実にしょーもないことで喧嘩したり、休日に友達と飲みに行って大笑いしたり...。でも、私がこうやって部屋でキーボードを叩いている間にもアラスカではクジラが跳ねたり、バリの友達はお祈りをしていたり、カレン族のみんなはロウソクの明かりの中赤ちゃんを寝かしつけているのかななんて、そういうことをふと考えてうれしくなれる、そんな感覚を持ち続けていければいいなと思っています。

谷川俊太郎さんの詩に、私の大好きな「朝のリレー」という作品があります。
星野道夫さんの作品を読んでいると、なぜかこの詩を思い出すのです。

カムチャツカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
(「朝のリレー」 谷川俊太郎)

[PR]
by cita_cita | 2006-01-31 23:53 | 読書

これぞ日本のジビエ ~比良山荘の熊鍋&猪鍋~

1年ぶりに比良山荘に行ってきました。目的は熊と猪の鍋料理です。
e0066369_17351623.jpg

比良山荘は京都と滋賀の県境に近い、大津市の坊村というところにあります。坊村は登山コースの入り口にもなっている場所で、京都からだと大原から朽木村方面に向かいさらに40分ほど北に進んだところにあります。
e0066369_1737498.jpg
ご覧の通り、お庭にも雪がいっぱいで京都市内とは別世界。
e0066369_17382957.jpg
お料理はお膳で出されます。器もすばらしいですよね。食前酒はゆず酒でした。
e0066369_1740753.jpg
ふたを開けると...くるみ豆腐におだしのあんを掛けたものと鮎のなれ寿司が。くるみ豆腐は、ごま豆腐やじーまみ豆腐のような食感で、ほんのりくるみの風味。あつあつをいただきます。なれ寿司も癖がなくていいお味。
e0066369_17425546.jpg
お造り。右から鹿肉、岩魚、鯉。下に敷いてあるのはわさびの葉。手前の黄緑のは、のかんぞう。鹿は辛味大根を巻いていただきます。柔らかく、まったく臭みがありません。岩魚のお造りをいただくのも初めて。しかしこんなに贅沢していいのか?
e0066369_17453080.jpg
もろこの甘露煮。もろこはコイ科の高級魚。甘みの中に少し苦味があっておいしい!
e0066369_17522874.jpg
e0066369_1756826.jpg本日のメイン、お鍋のスタートです。上の写真は熊のお肉。鮮やかな赤が印象的。びっくりするほど白い部分が多いですが、これは脂肪ではなくコラーゲンがメインだそう。意外なことに猪よりもけものっぽさがないので、こちらを先に頂きます。
そして左は比良山荘の若主人。食べている間ずっと隣でお鍋の世話をしてくださいます。色々な話が聞けるのもとても楽しみ。今年に入って熊が4頭取れたそうですが、熊がしっかり冬ごもりの準備をしたため、肉質が非常に良く例年と比べ150点の出来だそうです。これはマキノ周辺の山で獲れたツキノワグマだそうです。(と聞くとちょっとリアルでかわいそうなんですが...)

e0066369_1805069.jpg
鍋には、お肉の他、上賀茂で取れたせり、白ねぎ、うどなどの新鮮な地野菜や、地元産のきのこ(見たことない種類がいっぱいでびっくり!)がたっぷり入ります。野菜がおいしいことにまた感激。
e0066369_18352.jpg
熊が終わると今度は猪肉を投入。白い部分が熊より少ないですね。猪の方が野性味のある味です。
e0066369_1835713.jpg
お造りで出た岩魚の骨せんべいと、ふきのとうの天ぷら。もうお腹いっぱいなんですが...おいしくてつい手が...。
e0066369_185024.jpg
締めのごはんと鯉こく。実はこの前に、鍋に地元の方手作りのとち餅とうどんが入ったのです。ごはんが少ないのはそのせいです。

比良山荘、夏から秋の鮎が有名なのですが、冬もおすすめです。京都市内から1時間ほどかかりますが、行く値打ちは充分。ちょっと値が張るのでしょっちゅうは無理ですが、こつこつお金貯めて、年に2回ぐらいは行きたいなあ...(実はまだ鮎料理に行ったことがないので)
[PR]
by cita_cita | 2006-01-30 22:45 | おいしいもの

ガスパールの冬メニュー

金曜日、ひさしぶりに新町錦小路のガスパールに行ってきました。
最近新町六角にパスタなどもある2号店がオープンしたそうで、シェフはそちらに移っているようなのですが、そんなことを微塵も感じさせない相変わらずの絶品メニューの数々...
e0066369_2252376.jpg
まずは定番。チーズ風味のシュー生地。食欲をそそります。
e0066369_22524597.jpg
牡蠣とカリフラワーのムース コンソメジュレ添え。 その名の通り、大ぶりの牡蠣の上にたっぷりカリフラワー風味のクリームムース、その上にコンソメ味のジュレがのっかっています。牡蠣がプリプリで、たまりません。
e0066369_22534762.jpg
たら白子のムニエル 百合根のクリーム煮 ポルチーニ茸のソースがけ。 これは本当に美味しかった...。白子と百合根なんて組み合わせ、私なら絶対思いつかないけどすごく合います!そこにポルチーニの香りがいっぱいの濃いソースが掛かって、ぐっと味が締まります。

で、この後お口直しのカンパリグレープのグラニテが出て、私は牛ほほ肉の赤ワイン煮込みを頼んだのですが、写真を撮り忘れてしまったので、一緒に行った友人のメインを...
e0066369_22562070.jpg
本日の魚料理、すずきのソテーでした。
e0066369_2257089.jpg
デザートは暖かいガトーショコラ ピスタチオのアイス添えをチョイス。グレープフルーツ味の紅茶と一緒に頂きました。

あー、このお店はいつ来ても大満足です。2号店のカードも頂いたので行ってみなくては...
[PR]
by cita_cita | 2006-01-29 23:00 | おいしいもの

一乗寺中谷のお菓子

e0066369_11271712.jpg
昨日はうまく仕事が終わったらヨガに行きたいなと思っていたのですが、無理でした。でも7時過ぎに会社を出られたので、時計の電池を入れてもらおうと、四条烏丸の大丸に行ったのですが、閉店時間を勘違いしていました。8時半までだと思っていたのですが8時閉店だったのですね。
建物に入ったとたん、蛍の光が流れていて、ショック...。でもふと横を見ると「一乗寺中谷」が臨時出店していました。ここ、気になっていたけど私の家からは行きにくい場所にあるんですよね。せっかく大丸まで来たのだし、これもめぐり合わせだな…と「三色お豆のタルト(抹茶味)」と豆乳プリン(抹茶味とほうじ茶味)を購入。一乗寺中谷はもともと和菓子屋さんなのだけど、そこにパティシエのお嫁さんが嫁いできたので、和菓子のテイストをうまく取り入れた洋菓子が評判になっているお店です。和菓子に使う極上の丹波栗や黒豆、和三盆糖、抹茶などを使ったお菓子がふんだんにあります。この「三色お豆のタルト」にも小豆、黒豆、うぐいす豆が入っていて、他にもくるみやナッツがたくさん入っています。甘さは控えめで熱い日本茶ともいい相性でした。

ヨガにいくつもりが結局ケーキ食べちゃうってどうなの?と思ったので、とりあえず部屋で軽く身体を動かしてから眠りました。こんなので効果あるのかなあ...(笑)
e0066369_11241153.jpg
こんな包みに入っています。開けるのもワクワク。
e0066369_11244888.jpg
こちらは豆乳プリン。豆乳はおいしいお豆腐屋さんから仕入れているそう。器もいいでしょ?
[PR]
by cita_cita | 2006-01-27 23:57 | おいしいもの

「王国その3 ひみつの花園」 よしもとばなな

e0066369_2383560.jpg王国シリーズは、ばななさんの作品の中では比較的地味なんだけど実はもう3冊目なのです。そして、実は「王国その1 アンドロメダハイツ」は、ばななさんが「吉本ばなな」から「よしもとばなな」に改名した記念すべき作品です。

この人の作品については、「表現力がすばらしい」という人と、「プロとしては文章が稚拙すぎる」という人と意見がまっぷたつに別れるのですが、それは、ばななさんの表現がかなり感覚的なものであることに尽きると思うのです。文章が下手というのはつまり、ばななさんが平易な表現やひらがなを多用していることがそう思わせるのかもしれませんが、結局人の感じることなんて、驚きであれ、喜びであれ、そして悲しみであれ、それが本能的な反応であればあるほど表現の仕方は単純になってしまうと思うのです。あまり上手な例えではないけど、大切な人が自分を特別に思ってくれていることを実感できたら、きっと心の中でごく単純な言葉で喜びをかみしめるはず。「ああ、ものすごくうれしい!最高!生きててよかった!」なんていう風に。それを、「この人が自分に対して好意を持っていてくれると確認できたことで私は今、過去無かったほどの幸せな気持ちを感じているのだな...」なんて冷静でいられるはずがない。だからこそ、私にとってはばななさんの文体が、自分の感覚としっくりはまってしまうのだけど...。ただ、彼女の感性と波長が合う人にとっては、個人的な内面の感覚を「その気持ち分かりすぎる!」と思えるほど見事に表現してくれる作家であると同時に、合わない人にとっては「わけの分からない部分がありすぎて、結局何が言いたいのか分からないままだった」で終わってしまうはず。
実は、ばななさんのそういう感覚的表現の数々は、多少省いてしまったとしても物語の大筋には影響がないような気がします。だから、その感覚に共鳴できない人にとっては、これらの表現は物語を読みにくくする邪魔者のように感じられるかもしれません。でも、共鳴できる人にとっては、その表現が随所にちりばめられていることこそが「よしもとばなな作品」の魅力だと思うのです。

さて、本作の中でも心に残る表現がたくさん出てきました。
「ほんとうはさほどしたくないことに流されるときは、口数が多くなって、全身がそわそわして、おなかの底に小さく思い塊が生じる。それがどんどん大きくなって、現実の中にどかんときたときに「やっぱり」と思うのだ。」
「ほんとうのことというのは、時としてなんと残酷で露骨なのだろう。私はそう思いながら、傷のある生き物みたいにじっとしていた。なるべく何も動かさないように、もちろん心も。」
「何かをつかもうという感じで来る人の方が、全てまかせきっている人よりもこちら側としてはやりやすいのだ。~中略~全てまかせきってなんとかしてください、という人の場合、一見開かれているようだが実は心の扉は閉じていて、それを開くまでにひとつエネルギーを無駄に使うことになる。」
「過去の亡霊は頭の中にいて、たまに全身に満ちてくる。すると体から頭が離れてしまい、どんどん昔の影に飲み込まれていく。おそろしい底なしの影は、自由自在に伸び縮みしていちばん痛くて弱いところだけを大きく引き伸ばして私を痛めつける。悲しみはいつ襲ってくるかわからない。気をゆるめずに一歩一歩、歩んでいかなくてはならない、そういう気がした。」
「星も空気も草も木も精霊もなにもかもがみっちりと勢いよくひしめきあっている…息をするだけでエネルギーが入ってくるし、目を開けているだけでどんどん命の輝きが降ってくるみたいな、あのぜいたくな感じは山だけのものだ。たまになにかの拍子にそれがすっと入ってくることがあると、まるで絞りたてのジュースを飲んでいるみたいに甘く生きている瞬間だと思う。」

私にとっては、「絞りたてのジュースを飲んでいるみたいな」瞬間を感じられることは、旅の最中によくあるような気がします。今年もたくさんそういう瞬間を感じていきたいなぁ...。
[PR]
by cita_cita | 2006-01-25 23:08 | 読書

「THE有頂天ホテル」と「Mr.&Mrs.Smith」

最近みた映画を2つご紹介。

e0066369_17173157.jpg「THE有頂天ホテル」。公開3日目に見に行きました。
私は好きだなー、この映画。
ベタな笑いもあるのだけど、たたみ掛けるようにテンポ良く
展開するので見ていて気持ちがいい!
個人的にはオダギリジョーがツボにはまった。
伊東四朗もしつこいけど面白い。
役所広司はやっぱりウマい!元奥さんに見栄をはる場面との
ギャップがよかったー。そしてそれを見守る戸田恵子の演技もいいし。
篠原涼子のハチャメチャぶりもハマりっぷりも可愛いし。
YOUも最後決めてくれましたね。
それに生瀬勝久はああいう役柄やらせたらピカイチだし。
(そとばこまちで槍魔栗三助とだった時から好きだー。読売テレビの「週刊テレビ広辞苑」で「現代の匠」を演じてるのを見てファンになった私...って誰も分からんと思うけど。)
何といっても、これだけのキャストを使って、これだけの脚本を書いて
作品にまとめ上げた三谷幸喜の頭の中...一度見てみたい。本当に尊敬します。
欲を言うなら、もう少し早く公開してもらって年末に見たかったな。

e0066369_171747100.jpgそして、「Mr.&Mrs.Smith」。
こっちは昨日見に行きましたが・・・私は有頂天ホテルの方が楽しめました。
一緒に行った連れの言葉を借りると「ちょっとしつこいなあ」って感想です。とにかく、ずっとドンパチやり合ってるので見ているこっちの方が疲れてしまって...一つ一つの演出はいいのですが、ちょっと出し過ぎな感じがしました。
終わり方も唐突に丸くまとめすぎ。あれは終わってないと思う...
でも、まあこれがハリウッド映画の真骨頂なのでしょう。
あんまりケチをつけるのも何なので、良かった点をいうと、アンジェリーナ・ジョリーがキレイで、めちゃかっこよかった。
それを見ただけでも値打ちがあったかも。とにかく最高に目の保養になります。
でも内戦中のコロンビアであんなセクシーな服着てたら何をされても文句言えないかも。
あ、彼女は殺し屋だから心配ないか(笑)
敏腕スナイパーのブラピが彼女の前ではトホホっぽいところも良い。
それから、倦怠期のカップルの冷めた感じが何ともリアルに伝わってきて
殺し合いよりも、むしろそれまでの冷え切ったやりとりの方がちょっと怖かった(笑)
そういえば、アンジェリーナ・ジョリーがブラピの赤ちゃんを妊娠したそうですね。
おめでとうございます。
[PR]
by cita_cita | 2006-01-23 22:27 | 映画

泡波の夕べ。

e0066369_13362617.jpg

週末、友達の家で「泡波の夕べ」をやりました。
私が泡波と三線を持って行くと、友達はゴーヤチャンプル、ポーク玉子、
クーブイリチーを作ってくれました。沖縄料理屋みたい!
私はまだまだ練習途中の三線を弾き、一緒に「安里屋ゆんた」「涙そうそう」や
「てぃんさぐぬ花」を歌ってご満悦。
外は雪だけど気分は沖縄!
泡波、無くなってまた幻になっちゃった。あーあ(笑)
[PR]
by cita_cita | 2006-01-23 21:47 | 沖縄

「いつも旅のなか」 角田光代

e0066369_0405978.jpgこの本には角田さんの旅の記録がたくさん収められていて、そのひとつひとつのエピソードがとても面白いのだけど、あとがきもまた秀逸です。角田さんは、この本の中で、モロッコ、ロシア、ギリシャ、オーストラリア、スリランカ、ハワイ、バリ、ラオス、イタリア、マレーシア、ベトナム、モンゴル、ミャンマー、ベネチア、ネパール、プーケット、台湾、アイルランド、上海、韓国、スペイン、キューバを旅しています。私が行ったことがないけど行きたい場所もたくさん出てくるので読んでいて楽しかったです。

旅のエピソードの中で好きなのは、ロシアの話、ギリシャの話、イタリアの話、そしてプーケットの話です。

ロシアでは、国境を越える列車でものすごくトイレに行きたくなったのに、屈強な乗組員に断固阻止されて行かせてもらえなかった同行の編集者の女性の話が出てきます。トイレの近い私にとってはすごく緊迫感に満ちた話で、ものすごくドキドキしながら読みました。

ギリシャでは、35歳を目前にこれまでの貧乏旅行を脱却してリゾートを体験しようとします。角田さんのリゾートの定義は、青い海と空があること、移動せず、豪華ホテルで何もせずのんびりすること、ホテルのレストランで食事すること、そして地酒を飲まないことなどです。でも季節はずれの地中海、ロードス島にすぐに飽きてしまい、発作的にバスを乗り継ぎ、歩き回ってヘトヘトになり、村の食堂で老人に囲まれてウゾー(ギリシャの地酒)を飲みながら「ああ、気がつけば移動、気がつけば安食堂、気がつけば地酒。リゾートからずいぶん遠くに来たもんだ...」とこっそり思うのです。

イタリアではガイドブックの「犯罪の手口」のページが他の国より多いのにビビリまくり、実際に行ったことのある友人に「イタリアはどのぐらい危険な場所か」と質問して「はあ?何言ってんだ」という反応をされます。色んな手口に備えてお金を小分けにして、ビクビク歩いたフィレンツェの観光客の多さと人の陽気さに「もしかしてここは思ったより安全なのでは...」と気付き、自分が友人にした質問は、イタリアに行ったことのある人にとっては「ちょっと府中に行きたいんだけど、殺されないかしら?」というぐらい突拍子も無い質問だったのだなと反省します。

プーケットの話は、一番好きな話。実際にはプーケットはあまり出てこなくて、タイを好きになって何度かタイを旅して思ったことが書かれています。1991年に初めてタイに行きます。91年のタイはまだ貧しくて、物乞いの子供にたくさん出会ったり、血と肉の匂いのする市場を歩き、長距離バスのトイレ休憩で停まった食堂には裸電球がぶら下がり、配給のようにみんなと同じトムヤム麺を食べ、薄汚れたトイレを利用します。そんなタイに初恋のように惚れ込んですぐ翌年タイに行き、でも「タイのように好きになれる場所が世界にどのぐらいあるのだろう…」と思い立ち、その後しばらくタイから離れ、旅先は他の国へ。7年後、1999年にタイを訪れるとバンコクはものすごく都会になっていてみんなお金持ちになっていました。贅沢品だったシンハービールをみんな普通に飲んでいて、高級デパートもタイ人で混雑しています。タイはこの7年の間にバブルとバブル崩壊の両方を経験していたのです。その翌年、2000年にあの長距離バスにもう一度乗って、同じ場所でトイレ休憩を取りました。すると、あの食堂は天井に明々と蛍光灯が光る立派なレストランになっていました。トイレに行くと前にいたタイ人の女の子がドアを開けるなり「汚~い!こんなところ入れない!」と出てしまいました。恐る恐る中をのぞくと、普通の水洗トイレで、タイルの床に数匹の蛾の死骸が落ちているだけ。10年前は、床は水浸しで、手桶で水を流して、横には汚れた紙が詰まったカゴがあって、それでもみんな平気で用を足していたのに…。でも、ここで角田さんはタイは変わってしまった…などと憂いたりしません。蛾トイレの中でタイ人の清潔感の変化に感動すら覚えるのです。ある国で、何か世界観みたいなものが大きく変わる、揺らぐ、それを全身で体感することは、現代の日本ではもうできないこと。それを体感できたのはおそらく70年代までだったはず。 タイを通して、それを経験できたことに角田さんは感動し、それでも変わらない確固たる芯の部分(例えば市場の風景や地図を広げると親切に寄ってきてくれる人たち)をタイが持ち続けていることを確かめて、「私が最初に惚れた男は、惚れてしかるべき魅力のある男だった」と安心するのです。

最後に、あとがきを読んで、なるほど...と妙に納得してしまったので、その一部分を紹介します。
「旅は読書と同じくらい個人的なことで、同じ本を読んで感動する人もいればまったくなんにも感じない人がいるように、同じ場所を旅しても、印象は絶対的に違う。ときとして見える光景すら違う。さらに読書よりももっと刹那的だ。去年旅した同じ場所を、今年になって訪ねてみても、見えるものも印象も出会う人も、確実に違ってしまう。旅は一回こっきりだ。終わってしまったら、その旅はもう過去になる。二度とそれを味わうことはできない。~中略~旅は終わってしまうとするすると手を離れていってしまう。そのとき目にしたものは、永遠に消えてしまう。旅で見たもの、出会ったもの、触れたものに、私はもう二度と出会うことができない、書くことで、かろうじてもう一度、架空の旅をするしかできない。いや、書くことで、架空にしろ、二度とできない旅をもう一度することができるのだ。」

角田さんの著書「この本が、世界に存在することに」の中で、「本との関わり方は、人の数だけある」ということや、「だってあんた、開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう」という文章があるけれど、この2つの本を読んでみると、角田さんにとって本がとても大切なものであると同時に、旅についても同じく特別な感情を持っていることが分かります。本との出会いや付き合い方も、人とのそれと同じく、時には自分に大きな影響を与えてくれるものだし、旅もまた人との出会いそのものだと思うのです。
[PR]
by cita_cita | 2006-01-22 23:31 | 読書

タイから戻って思うこと

さて、2006年の年明けはタイで迎えたわけですが、今回の旅は、会社勤めを続けつつちょくちょくアジアに行ってきた私にとって、ある意味これまでの積み重ねの集大成という感じがしました。
e0066369_239251.jpg


e0066369_2394217.jpgたとえ1週間以内の短期間であっても何回かアジア旅を続けていると、最初は絶対できないと思っていたことが少しずつ少しずつできるようになってきます。
それは例えば、空港で悪い客引きに捕まらず目指す宿にたどり着くこととか、買い物や乗り物の代金を値切ったり交渉したりすることや、紙がなくてかめに貯めた水しかないトイレに行くこととか、地元の人と同じご飯を躊躇せず食べることとか、バイクがものすごくいっぱい走っている信号のない大通りをじわりじわり横切って渡りきることとか、そのようなことです。そして、それを苦にならないな、意外と楽しいかもと思えるようになったときに今回カレン族の村に行って、「ああ、今までの旅は今日を最高に楽しむためにあったのかも」と思いました。もし、最初の旅で今回の行程を回っていたら、あんなにみんなと仲良くなれなかったかもしれない。真っ暗な中、ロウソクを持ってトイレに行き、器用に片手で用を足したり、夜がふけるのも忘れて輪になって一緒に歌合戦をしたり、順番に回ってくる材料の分からない、でもやたら辛くておいしい食べ物をつまみながらよく分からない栄養ドリンクで割ったビールで乾杯したり、それを心から楽しめたかどうか疑問に思うのです。

e0066369_2310162.jpg私の初めてのアジア体験は13年前の中国でした。その頃は上海も、北京も今の10分の1もビルが建っていなくて、通貨は外国人用と中国人用の二種類がありました。ご飯はどれもおいしいと思えなくて、こわごわ食べては首をかしげていたのを覚えています。東南アジア初体験は、7年前のバリ島でした。夜、空港からヌサドゥアの高級ホテルに向かう最中、薄暗いオレンジ色の街灯の下、何をするでもなく歩道にしゃがんでぼんやりとこちらを眺めているバリ人を車窓から見て、暗闇に溶け込んだ顔の中に目だけがギョロッと目立っているように見えて不安になりました。ヌサドゥア地区をぐるりと囲む塀を出たとたんに、一斉に布やアクセサリーを持った人たちが私をめがけてやってきて、本当に怖かった。(今よりもっと規制が緩くて売り込みのキツイ時期でした) 

e0066369_23102460.jpgでも、結局は、それは私が「知らなかった」世界だから、怖く感じたのだなと今では思います。今回、カレン族の村を訪れるに当たっても、実は色々考えました。「あんまりジロジロ見たり写真を撮ったら悪いよな」とか「面と向かったとき、どう接したら一番いいのかな」とか。友達になりたいな、という気持ちはあるものの、果たしていざその場に立ったら自分はどういう反応をするのかなと不安になったり、物見遊山的気分で彼らの暮らしを覗きに行くのは間違っているのではないかと考えたりしました。それは私と同行した3人の友達も同じだったと思います。それが、現地に行って、カレン族の人と接してみて、一晩ですっかり消えました。彼ら、彼女らは、本当に普通に自分たちの生活を楽しみ、家族仲良く新年を向かえ、お正月だからとちょっと夜更かしをしてみたりカラオケでタイポップスを歌って盛り上がってみたり、何も私たちと変わらなかったからです。最初に彼女らの村に足を踏み入れ「本当に首が長い!顔が小さい!」と思ったその数時間後には、もう彼女たちの首輪は私の目には奇異なものでもなんでもなくなりました。旅と共にした友人、うっしーは「首輪があるか無いかなんて、今やほくろがあるかないか程度の違いにしか見えん」と言い、エグサは「なんか逆におしゃれに見えてきた」と言っていました。外見上の違いなんて、そんなものなんだと今回深く実感しました。

e0066369_23103867.jpgたくさんのカレン族のみんなと輪になって宴会をしていると、その中にも色んな人たちがいることが分かります。すごく人懐っこくて、腕を組んで私の肩に頭を乗せてくる子、全員にちゃんと飲みものが行きわたっているか、みんなが楽しんでいるか気を配っている姉さん肌の子、カラオケが大好きで、歌いだしたら赤ちゃんがおっぱいを欲しがって泣くまでマイクを離さない子、新婚さんで旦那さんの写真を見せてというと恥ずかしそうに、でもラブラブな写真がいっぱい詰まったアルバムを2冊も持ってきてくれた子…私たち日本人とどこが違うのでしょうか。結局、人の違いって外見じゃないのだ、中身なんだなぁ。それを確認し、安心し、行ってよかったなと思いました。カレン族の村を訪れる観光客の中には「もっと田舎だと思っていたのでがっかりした」とか「あまり近代化されず、昔のままの暮らしを守り続けて欲しい」とか思う人もいると思いますが、彼女たちだっておいしいものを食べたいし、恋もおしゃれもしたいし、子育てでストレスが溜まったらカラオケで発散したりしたいと思います。だから、私は今のままでいいと思うのです。たとえ住むところがミャンマーであっても、タイであっても、それ以外のどの場所であっても、カレン人としての自分たちに誇りを持ち続けられて、毎日が彼女らにとって充実したものであればいいなと祈っています。
e0066369_23112442.jpg
最後に、楽しい時間のきっかけをくれたのぞみちゃん、ありがとうね。またいつか会いたいね。
[PR]
by cita_cita | 2006-01-22 23:09 |

タイ北部の旅2006 その8

e0066369_1155585.jpg

1月3日。このあとチェンライを旅する予定のみさおを除き、チェンマイとも明日の朝でお別れです。今日はチェンマイ近郊の村を回るツアーに参加しました。ソンテウみたいな車が向かえに来て、4人で乗り込み出発です。私たちがチャーターしたプー・エコトレッキングは、2泊3日や3泊4日のツアーも実施しています。そのツアーでは観光地化されていない小さな村に行き、竹でご飯を炊いたり食器を作ったりし、夜は少数民族の家にホームステイするみたいで、ほとんど歩きのみのトレッキングらしいのですが、今回の日帰りツアーではあまり歩く時間はありませんでした。本当はたくさん歩くつもりだったので、ちょっと残念でしたが、結果的には楽しい時間が過ごせました。夜はチェンマイに戻り、4人で川沿いの夜景の見えるお店でタイ料理を食べて最後の晩御飯を楽しみました。そして翌日日本に帰ったわけですが、今回の旅行は、楽しい旅仲間にも恵まれ、うれしい出会いもあり、本当に充実した時間でした。最後に、チェンマイからの日帰りツアーと、一週間の旅の間に撮った写真の中から何枚かを紹介します。

e0066369_075692.jpg
足でシーソーみたいなものを踏むと、反対側には杵みたいなものが付いていて、もみ殻と玄米が分けられます。

e0066369_08858.jpg
竹ひご作りを体験。村の人がやっているのを見ているとすごく簡単そうなのに、どうしても途中で裂けてしまい、うまくいきません。竹ひごは、太めのものはカゴを編んだり、細いものは結び紐として活用したりします。

e0066369_082231.jpg
水が見えにくいですが滝を登っています。白い岩は、一見滑りやすそうに見えるのですが、不思議なことに全然滑りません。鍾乳洞も近くにあるので石灰岩かと思いましたが、石灰質は滑りやすいのが特性らしいのです。何の岩なのでしょうか…

e0066369_084571.jpg
お寺の中でこんなものを発見。これにコインをいれると(いくらのコインでもOK)ルーレットが回り、止まった番号のおみくじを引きます。おみくじはタイ語と英語で書かれています。

e0066369_09412.jpg
アイスの屋台。陽気なテーマソングと共にやってくるので、すぐに分かります。子供たちに大人気。

e0066369_091870.jpg
身を乗り出してアイスを注文するエグサ。子供よりも気合入ってます(笑)

e0066369_095247.jpg
少数民族の村で、子供が何かを叩いてるのを発見。遊んでるのかと思いましたが、よく見ると乾かしたさや付の豆でした。さやと豆の部分を分けているのです。

e0066369_01062.jpg
シャン族の少女。大きくなったら美人になりそう…。

e0066369_0102562.jpg
屋台でジュースを買うと、こんな袋に入れてくれます。最初はびっくりするけど、手も自由に使えるし、コップを手で持っているよりずっと楽チン。日本でも普及したらいいのに。ちなみにこれはイチゴとバナナのミックスジュース。

e0066369_010493.jpg
これはロティというお菓子。パンケーキとクレープの中間みたいなものです。私はバナナをはさんだものを注文しました。黙っていると、上に砂糖を振りかけ、さらに練乳まで掛けられてしまうので甘いのが苦手ならいらないと伝える必要あり。

e0066369_011784.jpg
ロティの屋台。粘り気のあるパン生地みたいなものを、調理台に叩きつけてどんどん伸ばしていきます。

e0066369_0131624.jpg
バイクのハンドルに何がかかってるのかな?と思ったら生きた鶏でした!

e0066369_0135189.jpg
ソムタム(青いパパイヤの辛いサラダ)の屋台にて。はじめプリッキーヌ(超辛い唐辛子)2本入れてもらったら辛さが足りなくて「もう少し辛く」というと5本プラスして7本になった途端、辛い辛い!ちなみにタイ人の平均は10本~15本だそうです・・・

e0066369_015579.jpg
するめ屋さん。味も食べ方も日本のとほぼ同じ。七輪で焼いてローラーで伸ばしてくれますよ。4切れ10バーツ。

e0066369_017218.jpg
ちょっと覗き込んだお家の親子。お母さんも美人だし子供もかわいい。

e0066369_0175062.jpg
最後は王様。(プミポン国王)タイ人は王様が大好き。どこに行っても国王はじめ王族の写真やイラストを見かけます。これはチェンマイの空港の正面入り口にて。
[PR]
by cita_cita | 2006-01-21 00:20 |