「まぼろしハワイ」 よしもとばなな

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それは2月の初めのこと。親友なおっちが旅したハワイ島に一緒に行きたかったのに、仕事の都合でどうしても休みが取れなくて残念で、でも頭からハワイの文字が消えなくて、それで手に取った久しぶりのばなな本でした。日本でフラダンスを教える第一人者、サンディーさんにフラダンスを習っているばななさんがハワイへの思いをこめて5年かけてじっくり書き上げた一冊です。オアフだけでなく、ハワイ島も出てきます。

ばななさんがかつて、バリについて書いた「マリカのソファー」を読むと、いつでもバリの空気がムクムクと胸の底から湧き上がってくるように、この本にもいっぱいハワイの空気があふれています。ばななさんの文章はとっても感覚的な表現が多いので、他の作家の作品と違い、なかなかストーリーを説明するのが難しいんですよね。たとえ主人公の置かれている家庭環境が非常に特殊であったり、出会う人がものすごーく変わっていたりしても、信じられないような偶然が起こったりしても、時は流れ、物語全体は淡々と語られていくというか。今回の話も、ひとことで言うと「家族となんらかの形で悲しい別れを経験し、寂しさを抱えた人たちがハワイと接することで次第に癒されていく話」というところでしょうか。 わー、こう書いてしまうとなんだか「え、それだけ?」と思われてしまいそうです。やっぱり自分で読んで、ばななさんの文章を通して流れているあの独特の空気感を味わってもらいたいなと思います。

ハワイにまつわるいくつかの話が集まって一冊になってるんですが、その中でとてもとても印象的な文章があったのでご紹介したいと思います。

「このまま居残って、なんだかよくわからない毎日を送りたい。旅に出るといつだってそう思う。でも日常になるといつのまにかルーチンができてくる。人間はそれが大好きだから。朝飲むのはいつも同じところで同じもの、起きる時刻も着る服も、買い物をするお店もだんだんだんだんしぼりこまれてくる。そして旅は日常になり、自分はどんどん自分になっていく、ただそれだけだ。どこにいようがそうなのだ。だからこそ私はこういう意外な一日が好きだ。」

なんだか激しく頷いてしまった私でした…。誰もが同感できるこういう感覚を、きちんと自分の言葉で表現できるばななさんって、やっぱりすごい。
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by cita_cita | 2008-02-25 23:21 | 読書
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