「仏像のひみつ」 山本勉

e0066369_1662418.jpg
私はいわゆる仏像フリークではないので、仏像のことはあまり詳しくないのです。
でも、長年京都に住んでるおかげで、休日にふらりと一人で知らないお寺に行ってみたり、有名なお寺に知人を案内することもあったりして、仏像を見る機会は結構多いほうだと思います。

お寺に行って仏像を見ると、わりと真剣に説明書きを読んで理解を深めようと努めるのですが、なんか、分かったような分からないような…。要するに、難しいんですよ、説明が。「不動明王が」とか「阿弥陀如来が」と書いてあっても、表面的には分かるのだけど、その仏様たちがどういう役割で、どういう特徴があるのか実際には、ほとんど分かってなかったのです、恥ずかしながら。で、もっと詳しくなりたいなーとかねがね思っていました。けど、仏教関係の本ってなんか難しいから、(本当はありがたいこと書いてあるはずなのに)読んでいても疲れてしまう…。

図書館で偶然見つけたこの本はそんな私の救世主!とにかく、カンタン!分かりやすい!そして装丁がすばらしい!イラストも仏像なのにかわいいのです。最初のページ開けたらタイトルが「仏像たちにもソシキがあった!?」ですよ。会社組織みたいなピラミッドの中に、如来、菩薩、明王、天って入ってる。しかも菩薩の説明の欄には「如来目指して修行中。」だって(笑)大仏様のパンチパーマが、長い修行生活の末に長く伸びきった髪が(悟りを開いた瞬間)ひとりでに束になってクルクルと丸まってまとまったものだなんて知ってました?そしておでこの丸いのはいぼではなく、白い毛が生えて丸まったものだなんて…。あと、「仏像はやせてたり太ったりする」のだそうです。つまり、時代によって太めの仏像が多い時期と、ほっそりしたのが好まれた時代とあって、それが分かれば仏像を見たときある程度年代が分かるのだとか…。なんか目からウロコ。

なんでこの本こんなにわかりやすいの?と思ったら、東京国立博物館で大盛況だった小中学生向けの仏像展の内容を書籍化したものだそうです。だから小難しいことは一切抜きで、かなりざっくりとした説明です。でもこれで十分だと思う。よく、「本当に分かっている人は、難しいことを簡単に伝えることができる」っていうけど、まさにこの本のことだなあと納得。今度、仏像見たら、きっと今までよりずーっと面白いだろうなと思う。今まではただ「これは重要文化財になってる仏像だから、とってもありがたいものなのだ。」と自分を納得させながら、分かったふりしてじーっと見ていた私でしたが、これからは仏像のどこを観察したらいいかポイントが初めてわかったような気がします。手はじめに三十三間堂あたり行ってみようかなあ。

千手観音の説明が面白かった。「千手観音像なのにどう見ても1000本も手がないって?そうです、確かに1000本もありません。たぶん絵にするのも仏像にするのも難しかったのでしょう。ちなみにこの仏像には42本の手があります。1本の手で25の世界の人を救えるらしいから、40本の手で1000の世界の人を救えるそうです。そこにもともとの2つの手を加えて42本なのです。」 手に持っているいろいろなもの(お経、蓮の花、はたきみたいなもの、弓、斧などなど)も図説されていて、今度じっくり見てみようと思います。ちなみに千手観音の手のひらには目玉があるんだって。知らなかったー。

そうそう、あとがきである「おしまいに」に、とても印象的な言葉が記されていました。

「仏像のひみつは人間のひみつです。仏像をつくった人たちやつくらせた人たち、それに仏像がまつられたお寺のお坊さんたち、仏像をおがんだ人たち。仏像の姿にも、仏像のかたちにも、そして仏像のなかみにも、気がとおくなるくらいたくさんの人たちのいろいろなちえや考え、そしてよろこびや悲しみなどいろいろな気持ちがはいりこんでいるのです。だから仏像はふしぎなのです。仏像にはひみつがあるのです。」
この文章を読んで、何かがぴーんとつながったような気がしました。私が、旅行をするときいつも感じていることと一緒だったから。私が旅をして、遺跡を見ていつも思うことがあります。たとえ、それがどんなによく知られた遺跡、たとえばアンコールワットや、琉球王朝や、ポンペイの遺跡であっても、私が感動するのはそのひとつひとつのレリーフや造形の美しさそのものではなくて、その時代にそれを作った人や作らせた人や、守ってきた人がいるのだと、その遺跡を通して感じるからなのです。それはもちろん、遺跡だけではなく、旅の中でであった食べ物や、道具や、言葉のひびきや、人々の習慣や、すべてのことがそうなんです。このあとがきを読んで、初めて「仏像も同じなんだなー」と感じることができました。今まで、私にとって仏像は宗教上のありがたいものであって、そこにかかわった人とのつながりについて考えたことなんてありませんでした。でも、これからは今までと全く違った目線で仏像を見ることができそうです。この本のおかげです。
[PR]
by cita_cita | 2007-10-15 21:44 | 読書
<< ルッコラといわしのパスタ ゆず... 琉球ラビリンス「栄町市場」 >>