「島唄の奇跡―白百合が奏でる恋物語、そしてハンセン病 」 吉江真理子

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沖縄に白百合クラブというグループがあります。
戦後すぐに石垣島出身の若者たちによって結成され、戦争で深く傷つき、疲れ果てた沖縄の人たちの心を音楽で癒して励ましてきた伝説的なバンドです。そして60年たった今もまだ活動を続けています。

この本は、その白百合クラブの結成者であり主要メンバーであった多宇郊という男性と、彼が遺した別れの歌「貴方を信じて」という歌が、話のきっかけとなっています。この歌について調べるうち、生涯独身であった彼が思い続けた貴子さんという女性の存在を知り、なぜ彼の思いが実らなかったのか、その秘密を追いかけるうちに作者が出会ったさまざまな事実が綴られています。というと、なんだか色っぽい話ばかりのようですが、実はふたりが一緒になれなかった背景には、かつて「らい病」という名で呼ばれたハンセン病患者に対する歴史的な偏見が関わっており、この本の中盤から後半にかけては沖縄をはじめ、全国のハンセン病患者、元ハンセン病患者、そしてその家族たちの抱えてきた苦難の現実が詳しく紹介されています。

以前、「ナミィと唄えば」という映画を見たとき、その中でもナミィおばあが台湾のハンセン病療養施設に慰問に訪れ、唄三線を聴かせて交流を深めている様子が描かれていました。また、ハンセン病が原因で夫に捨てられた女性の気持ちを歌った曲の歌詞(これはとてもつらいものでした)も紹介されていました。

1996年に長年続いた差別的悪法「らい病予防法」が廃止され、2001年に患者側が国を訴えた国家賠償請求訴訟で勝訴したことがマスコミにも大きく取りあげられ、注目を集めました。私もそのときのニュースを覚えていますが、そのまま詳しくは知ろうとしなかったため、中途半端な知識のままでしたが今回この本を読んだおかげで、これまでの経緯がなんとなく分かってきました。今度は関連本として松本清張の「砂の器」を読んでみようと思います。今回、ハンセン病について調べものをしていて初めて「砂の器」がハンセン病を取り扱った話だと知り、驚いています。こんなに有名な本なのに、実は今まで手に取ったことがなかったことが悔やまれます。

本を読むということで自分の世界や興味が広がるのはよくあることですが、それ1冊で終わってしまうのではなく、他のと本の出会いにもどんどんつながっていくんですよね。若いころもっと本を読んでいたらなあと思うこともしばしばですが、そう思うなら、今からでもどんどん新しい本や作家と出会っていきたいなあと思う今日この頃です。
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by cita_cita | 2007-10-04 23:02 | 読書
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