「フランス日記」 高山なおみ

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私の大好きな料理研究家、高山なおみさん。彼女の作る料理やそのレシピも好きだけれど、何より彼女の書く文章や自然体で決して器用ではない(むしろ不器用な)生き方、考え方に本当にひかれます。

この本は、そんな高山さんが自身の料理本「じゃがいも料理」製作のための取材旅行としてフランスを訪れたときの旅行記。もともとは彼女のブログ「日々ごはん」に書きあらわそうとしたものが、あまりにも色々なことが浮かんでくるため書ききれなくて、「日々ごはん特別編」として出版されたものです。

生まれて初めてヨーロッパの地に降り立って、目で見るもの、聴こえてくるもの、食べたものを通じて感じたあらゆることを、本当に自然体に、ありのままに書く高山さんの文章を読むと、やっぱりこんな人、なかなか居ないよなあと改めて感心してしまう。そうして綴られた文章を読むうちに、何度も何度もはっとさせられる。

例えば、生牡蠣を食べたときの印象を彼女はこう表現している。
「レモンを絞ってすすると、海の味が口から喉までいっぱいに広がる。生牡蠣には必ずパンとバターがついてくるそうだが、なんでその組み合わせなのか、食べてみて分かった。そこら辺にあるような、ただの田舎パン(カンパーニュ)なんだけど、牡蠣の味が残っているうちにバターをつけて食べると、口の中がすごくおいしくなる。牡蠣の海水と、パンの苦味と酸味、塩気の強いバターはちょっと酸味もある。」

そして、その後をこう結んでいる。
「おいしさって、口に入れてすぐに分かるものではないんだな。噛んでいるうちに混ざり合って、口のあちこちに広がって、飲み込んでからもまた後味みたいなのが上がってきておいしいんだ。よく食べ歩きのテレビ番組で、タレントさんが食べてすぐにコメントするけど、やっぱりあれは信じられない。」

高山さんの文章は、決して技巧に富んでいるわけでもないし、むしろとても不器用で、プロっぽさとは対極にあるような素朴な文章だと思う。でも、そこに嘘も、読む人がどう感じるかという計算もなく、決して格好をつけず自分に素直であろうとしているから、こんなにも心に響く。自分の感情を、自分の中身をじっくりと時間をかけて見つめて、やっと出てくる言葉だから他の誰とも違う「高山なおみ」の文章になる。こんな風に物事を見つめて、こういう文章を自分も書けるだろうかと思うけれど、そう思ってしまう時点で無理なんだろうなぁ…。
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by cita_cita | 2007-06-22 22:19 | 読書
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