「さくらん」

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1週間前の週末になりますが見に行ってきましたよー。京都では「京都シネマ」での上映なのですが、なんと立ち見でした。会場があまり広くないこともあると思いますが、どの回も満席の状態だとのこと。

いやあとにかくど派手な色の洪水に圧倒されます。それも決して趣味がいいとはいえない(むしろ悪趣味)な色の世界。吉原の遊郭という、日常を忘れて遊ぶための特別な場所であるからこそ、このような毒々しいまでの色彩絵巻がぴったりと来るのでしょうね。(人にもよると思うけれど)あの部屋の中で毎日暮らすのは、私だったらきっと落ち着かないと思う…。ここを訪れる男性たちも、ひと時我を忘れて、夢から覚めてまた自分の居場所に帰って行くわけです。だけど、ここで毎日を過ごし、ここから出ることを許されない女たちがいます。その、吉原の遊女たち、そしてその最高峰である花魁(おいらん)がこの物語の主人公です。

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原作はあの安野モヨコ(「ハッピーマニア」「働きマン」「美人画報」など)。先に原作を読むと、少しイメージの違う部分もあるのだけど、映画作品としては十分楽しめる要素満載です。そして監督は蜷川美香。フォトグラファーならではの色彩センスと光の使い方、構図やアングルなど、動画の一瞬を切り取ると、1枚の写真作品になりそうな場面が次々と出てきます。祝言前夜、主人公の花魁、日暮(ひぐらし)が廓の中庭を取り囲む廊下にたたずむところを彼女のよき理解者である清次どんが階下から見上げる場面、紅色の壁と黒い瓦屋根の建物、そしてその上に見える黒い夜空にぼおぅっと白く浮かぶ月のコントラストが鳥肌が立つほどきれいでした。また、金魚(池に放つと3代でフナに戻ってしまうため、ガラスの鉢の中でしか美しく生きられない金魚は花魁の生き様の象徴として随所に登場します)が泳ぐ姿を透かして見える吉原の風景や、最後の桜の場面など、絵になるシーンには事欠きません。その日暮(花魁になる前はきよ葉という名前)を演じるのは土屋アンナ、そしてきよ葉の先輩花魁に菅野美穂と木村佳乃。音楽は椎名林檎…(主要スタッフのほとんどを女性で揃えているところもこの映画の話題になった部分です。)

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きよ葉と日暮を演じる土屋アンナの女っぷり(ある意味男っぷり?)には惚れ惚れするものがありました。遊女という身の上であっても心はすごく純粋で一途なところがあって、そのギャップがちょっと「下妻物語」のイチゴを思い出させてくれました。(あっちは遊女ではなくヤンキーでしたが)。

清次どんの役を演じたのが安藤政信でしたが、とってもいい役でした。ライバル花魁の高尾(木村佳乃)にケンカを売られたきよ葉をなだめて「泣いたら負け、惚れても負け、勝っても負け」と諭す場面がよかったです。土屋アンナが子供からどんどん大人に成長していくのに清次どんはあんまり変わらないのが不思議でしたがカッコイイので許す(笑)

きよ葉が最初に惹かれる男性を演じるのが成宮寛貴。自分だけを一途に愛してくれていると信じて吉原を抜け出した末に、彼の本性を見たきよ葉が「笑う鬼だ…」と全てを悟るシーンでの彼の表情の変化(驚き→微笑)は歌舞伎俳優のような色気があって、ぞくっとしました。男前はどんな表情も決まりますね。

あと、さすがの貫禄だったのが夏木マリ。廓の大女将を演じているのですが、この役ハマりすぎ。他の女優がこの役をやることなんてもはや想像つかないほどぴったり。花魁役では、菅野美穂と木村佳乃は見事な脱ぎっぷりと演技で女優魂を見せてくれました。彼女らの話す廓ことば(遊郭での言葉遣い)も独特でとても興味深かったです。「~でありんす。」とか「わっちはそんなものいりんせん」とか。この廓ことばは、彼女らにこの独特な言い回しを教え込むことで、彼女らの出身地のなまりを隠し、また彼女らが遊郭を逃げ出して吉原の外に出たときにその言葉遣いで身元がわかるようにという目的もあったのだそうです。

チョイ役も含めて、たくさん大物女優・俳優さんたちが出ていたのでもう一回見たい作品です。DVDが発売になったらこんどは部屋のインテリアなどの細かい部分もじっくり観察してみたいです。
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by cita_cita | 2007-03-19 23:30 | 映画
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