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「ちりとてちん」とつく枝さん

「NHK上方落語の会」の公開収録に行ってきました。
今回の演目は以下の通り。
笑福亭 風 喬「犬の目」
 桂  つく枝「ちりとてちん」
 桂  雀 々「鶴満寺」
-中入り-
 桂  枝女太「持参金」
 桂  春団治「代書屋」

今回の目的は、もちろん、私のイチオシ、桂つく枝の「ちりとてちん」が見れることと、春団治師匠の噺を聞くこと!前回、京都で市民寄席見に行ったときは、春団治師匠、怪我のため休演で、代わりに福団治に代ったのですよねぇ。その時は春団治が「祝いのし」をやる予定が、福団治の「くっしゃみ講釈」に変更になったのでした。

ところが。こんどこそと勢い込んで会場に向かった私の目に飛び込んできたのはなんと「桂春団治、体調不良のため本日の公演は福団治「藪入り」を代演させていただきます」との張り紙。ガーン!なんでやねん…とぼやきつつ自分の運のなさ(というか春団治との縁のなさ?)を嘆く私。こんな私にいつか、春団治の落語を聞ける日はやってくるのでしょうか…

それにつけてもつく枝さん。最近テレビでの露出も少しずつ増えてきているせいか、出てくるなり「つく枝!」と掛け声が飛んだり、名前を名乗っただけであちこちから拍手が起こるのを見て、私までなんだかうれしくなってしまいました。もっともっとビッグな噺家さんになってほしいなぁ。いや、絶対超売れっ子になると思うな。つく枝さんの顔を見てると、それだけで訳もなく楽しくなってくるんですよ。つまらないことでイライラしたり悩んだりしてるのがバカらしいっていうか。確かにあの顔はずるいと思う。だって、顔のつくりって基本的には生まれつきのものだから、本人の努力ではどうにもならない。寄席に行って何人もの噺家さんが代わりばんこに高座に上がるのを見ていても、そりゃあ色々な顔の人がいる。その中で、つく枝さんの顔には、初めて見た瞬間から人をひきつけるものがあると思う。「あ、この人、なんか面白いことやってくれそう。」とワクワクさせるような何か。もちろん生まれ持ったの顔のつくりだけでも、彼は得をしていると思うけど、それに加えて今まで積み重ねてきた色々な経験が、あの暖かいオーラを作っているのだろうなと感じます。

前置きが長くなりましたが、そのつく枝さんの「ちりとてちん」。予想通りもう最高でした!前半から大暴走。この噺は前半と後半に分けられるのですが、前半は話していて気持ちのいい相手、気の会う相手と酒を酌み交わし楽しむ場面、そして後半はその2人が気の会わない、いけ好かない相手を懲らしめてやろうと、ちょっとした(というか相当意地悪な)いたずらを仕掛ける場面です。登場人物は少ない上、オチがはっきりしてるので落語初心者が見ていても十分楽しめるはずです。前半の旦さんと喜ぃさんという気の会う2人のやりとり、特に喜ぃさんの大げさなおべんちゃら、でも大げさすぎて嫌味を通り越して「そんなアホな」と突っ込みたくなるやりとりが楽しいのです。後半部分、「いけ好かない」竹(たけ)という男が何でも知ったかぶりをして、決して相手のことを褒めずケチを付けまくる、このコントラストも見せ場ですが、その中で色々小ネタが出てくるのが好きです。腐った豆腐を「長崎名物ちりとてちん」と勝手に名前をつけて、知ったかぶりの竹に食べさせてやろうとするのですが、わさびを入れて「毒消しになるやろ」というくだりや、「あいつは絶対いちゃもんつけよるから、名前の右上に小さく"元祖”と書いといたれ」とかいう部分、それにちゃんと竹が反応して「元祖!…ホンマもんですわ。ニセモノはここに"本家"と書いてある」というやりとりなど、単純なだけにここをどれだけ面白く見せるかが腕の見せどころでしょうね。

みなさんも、もし落語を見に行く機会があったら(あるかな?)、「ちりとてちん」という名前はぜひ覚えておいてくださいね。前座向きの短い話で、人情味や深い教訓のあるじっくり聞かせるような話ではないですが、日常のちょっとした話を膨らませて笑いに変えてしまう、落語の醍醐味を味わえるネタだと思います。なお、この演目はNHK(関西だけかな?)で月1回放送されている「HNK上方落語の会」という番組で放送されます。多分3月の放送になると思いますので、ぜひ見てください!
by cita_cita | 2007-02-21 22:05 | お笑い
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