「恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。」 角田光代

e0066369_23293928.jpgこの人はホントに多作な作家だ。
ちょっと本屋に行くのをサボると、すぐに新刊が出ていてびっくりする。きっと、頭の中にどんどん書きたいことが浮かんで、しかも書くのも速いのだろうな。(もし違ってて、血を吐くような思いで書かれているとしたら、角田さんすみません) 次から次へと新刊が出るのは、興味のない作家だったらどうでもいいのだけど、好きな作家だから素直にうれしい。

この本は2003年から2005年にかけて、角田さんがブルームブックスという出版社のウェブサイト上で連載していたコラムをまとめたもので、コラムだけあって読みやすく軽いノリの話題がテンポよく展開される。そういうささいな話を読んでいても、やはりこの人の視点とかセンスって好きだなーと思う。

「褒め男に遭遇したことある?」のコラム。褒めるのがものすごくうまい男、というのがときたまいて、下心も全然なくただ褒めるのがうまいという。でも相手に自分は特別だと錯覚させてしまうほど褒めるのがうまいというのが問題。本人はなんとも思っていないのに褒められた女のほうが知らず知らずその言葉にとらわれてしまう。たとえば「お前って本当にうまそうに飯食うなあ。見てるとこっちまで飯がうまくなるよ。」といわれたさっちゃんは、その言葉でぽーっとなってしまい「ものすごい勢いで食べる女」と化してしまった。彼には全然その気はなく振られた後15年が経過しても彼女はいまだに食べキャラから抜けられないらしい。そういう角田さんも「角田は若いのにキレイにタバコを吸うなあ。品があるよ」と上司に言われ、「煙草キャラ」がむくむく成長して本数が一気に跳ね上がったとか...。

「プチトラウマはありますか?」では、親に虐待を受けたとか激しいいじめにあったとかそんな大きなものではなく馬鹿馬鹿しいようなトラウマのことが書かれている。角田さんのプチトラウマは「ごはんが残ってカレールーがなくなる」というもので、これは一度レストランでルーが少なすぎたためにご飯がたっぷり残ってしまい福神漬けも付いておらず、ごはんを残して空腹のまま店を出たことが原因らしい。それ以来外でカレーを食べるたびビビンパのようにルーとごはんをぐちゃぐちゃに混ぜて食べるクセがついたらしい。それから長距離移動のときのトイレ。トイレのついていないバスで2回「もうだめだ」と思ったことが原因で「長い時間バスに乗るときはちょっとどこかおかしいと自分でも思うぐらい何回も何回も、出なくてもトイレに行く」というプチトラウマ。そして街で目の前を通り過ぎたかっこいい女の人がスカートのすそをストッキングに突っ込んで「尻丸出し」で歩いていたのを見てから生まれた「スカートの後ろがパンツに挟まってるのでは!」と思うプチトラウマ...。あなたのプチトラウマってありますか?

「部屋話と恋人話、関係あると思わない?」は、世の中には自分の恋人をやたらと褒めちぎる人と、やたらとけなしまくる人と、いると思いませんか?という問いで始まる。角田さんの分析によれば、住んでいる部屋話と恋人話は比例する。引越しした友達に今度の家はどんなとこ?と聞いたとき、利点のみを説明する人と欠点をまず伝える人とぱっきり分かれるのだそう。「前のとこに比べて広くなったし、夜はすっごく静かで、隣が公園だから緑がいっぱい」という家に行くと駅から20分だったりする。でもこういう人は恋人のことも褒めちぎる。逆に「隣のうちのもの音がする、家賃が前より一万高い、トイレの壁紙が気に入らない」という人は同じく恋人のこともまずけなす。だけど行ってみると実際の住まいもなかなかいい物件だったりするのだ。その経験から、友達と話していて「で、一体この子の恋人の実態はいかに?」と思ったとき、角田さんは部屋のことを聞いてみたりして、彼女の話す男性像から少々天引きしたりプラスを上乗せしたりするらしい。

とかなんとか、こんな感じの軽~いノリの話がいっぱい詰まってて一気に読めてしまいます。電車とかで細切れの時間に読むのにお勧めの本です。でもやっぱり、角田さんのセンス、いいよなあー。身近に居たら絶対友達になりたい...。

ちなみに私のプチトラウマは、角田さんと一緒で「トイレに行きたいときいけなかったらどうしよう」と「今、私チャックが開いてるんじゃないか」というトラウマです。前者は、お花見や花火大会や野外コンサートで、ビールを思い切り飲みたいのについセーブしてしまい、飲みたい気持ちとトイレの恐怖のせめぎ合いでいつも葛藤しています。人が大勢集まる場所に行くと、まずするのはトイレの場所の確認、これ常識。一方後者の方は、実際にしょっちゅうチャックが開いてることがあるので…。いつも無意識にチャックのあたりを触ってちゃんと上まで締まってるかどうかさりげなく確認するクセがついてしまってる私です。
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by cita_cita | 2006-08-09 23:29 | 読書
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