「自湯寄席」@白山湯

これはなんでしょう。そう、お風呂屋さんの下足箱です。
e0066369_17331475.jpg
落語会なのになぜお風呂屋さんの写真かというと、それはお風呂屋さんで寄席があったからです。とはいっても、もちろん裸で寄席を聞くわけではなく、お風呂屋さんの定休日に寄席があったのです。この落語会が行われたのは、新町六条の「白山湯」。その名も自湯(じゆう)寄席の第10回目公演でした。この日の演者は、桂米二「煮売屋」、桂二乗「崇徳院」、桂米二「ろくろ首」、桂雀々「鶴満寺」というメンバーでした。

「煮売屋」は、私の先輩が落研で十八番にしていて、何十回も聞いたネタだったので、聞いていても次のせりふがどんどん浮かんでくるのが自分でも面白かったです。次に何が来るか分かっているのに笑えてしまうのが落語のすごいところですよね。この「煮売屋」はストンと決まるサゲではなく、「わあわあ言うております、おなじみの○○というお笑いでございました。」で終わる系の噺なので、それまでの段階でどれだけ笑わせてもらえるかで「ああ面白かった!」となるか「なんか不完全燃焼」となるか決まってくると思います。お伊勢まいりをする2人の男の珍道中を描いたネタですが、前半が自分の覚えていた内容とちょっと違ったような気がするので、ちょっと調べてみてすごいことに気付きました。(っていうか落語好きなら常識?)先日、京都の市民寄席で、笑福亭喬若さんがやった「七度狐」というネタを観たのですが、この「煮売屋」の2人の旅は「七度狐」へと続くのだそうです。煮売屋(食堂)からすり鉢に入ったおかずをこっそり持ってきた2人は、中身を食べて空っぽになったすり鉢をばれないように草むらにポーンと捨てます。捨てたすり鉢が狐の頭に当たって、怒った狐に2人が化かされるというのが「七度狐」だったのです。そういえば、この2つの話、今考えてみれば、登場人物のかけあいとか、雰囲気が似てるなーって納得です。当然ですね、同一人物だったんですから(笑)

次の「崇徳院」は、なんと前座の米二さんの弟子である二乗さんが担当。というのは、この「崇徳院」というのは上方落語でもかなりの大ネタらしく、前座向きではないそう。 その大ネタに二乗さんが初挑戦するというので、師匠の米二さんが自ら前座を買って出たというわけです。「煮売屋」も「七度狐」も前座ネタなのですね。崇徳院、初めて聞くネタだと思ったのですが、途中から「あれ?何か聞いたことある…」と思い始めて、最後まで聞いてみたのですが、結局これまでに観たことがあるかどうかはっきりしなかったのです。多分観たことなかったのでしょうね。私が「あれ?」と思った部分というのは、恋わずらいで衰弱しきった若旦那が、主人公に「私の話、笑わんと聞いておくれよ」という場面や、百人一首の崇徳院の歌の上の句「瀬をはやみ」という部分に節を付けて大声でどなる部分なのですが、このパターンの場面はきっと他のネタでも出てくるものだと思います。間にドタバタはいっぱいあるものの、ハッピーエンドのすごく素敵な話です。若旦さんの一目惚れの相手を、主人公の熊五郎が大阪中あてもなく探し回るのですが全く見つかりません。でも、同じく相手のお嬢さんの家族に頼まれて、お嬢さんの恋わずらいの相手(熊五郎の若旦さん)を探していた棟梁風の男に奇跡的に鉢合わせして、めでたしめでたしという話です。熊五郎がついにその男に出会ってパニックになり、大騒ぎする場面がこの長~い噺の見せ場ですね。二乗さん、師匠の後ということもあるし、大ネタということもあって、すごく緊張されたと思いましたが、すごく上手で引き込まれました。

e0066369_031559.jpg「鶴満寺」は実際に大阪の天六の近くの長柄というところにあるお寺で、ここでの花見を題材にしたネタです。先日聞いた「隣の桜」といい、この時期ならではのネタを聞けるというのはうれしいですね。10回目の記念公演ということで雀々さんが来られていたのですが、やっぱりあの人が出てくると安心すると同時に、いきなり笑いが起こるからあの顔はちょっと反則ですよね(笑) まくらから飛ばしまくりで、お客さんも大ウケ。このネタは、船場あたりの問屋の旦さんが芸者衆と太鼓持ちを引き連れて、桜の名所である鶴満寺に花見に行く場面から始まります。ところがその鶴満寺は、今年からお堅い住職に変わったとかで、酒を飲んで大騒ぎするような花見の客は入れないように留守番の寺男、権助(ごんすけ)が一行を阻止しようとします。「自分達は宴会ではなく、歌詠みの会でやってきたのだ」とうそをついて権助をなだめすかし、賄賂を渡して中に入り込み宴会を始めます。実はこの権助が無類の酒好きで、お酒をすすめると最初は遠慮がちに「じゃ、一杯だけ」なんてやっていたのに、どんどん酔いが回り、みんなに絡み、最後には一人眠りこけてしまったところに住職が戻ってきて…という話です。権助の言動がすごくユニークで、これを雀々さんがやるとゲンキンだけどなんだか可愛いおじいちゃん!という感じでどうも憎めないのです。(なんか私の大好きだった故桂枝雀さんを思い出しました。雀々さんの師匠ですもんね。)最後のサゲも「納得!」という感じで気持ちよく終わるので好きなネタになりました。でも、どうやらこのネタをやる噺家さんはあまり多くないみたいですね…。いいチャンスに恵まれました。
[PR]
by cita_cita | 2006-04-11 00:26 | お笑い
<< ワークアウトの日々 蓬莱軒のひつまぶし >>