「てぃーあんだ」と 山本彩香さん

e0066369_17311446.jpgてぃーあんだの「てぃー」は沖縄の言葉で手のこと、「あんだ」は油のこと。そのままの意味だと手の油ということになりますが、たっぷり手間と時間をかけたとか、丹精こめて手塩にかけて作る料理を表すたとえに使われます。この本の作者、山本彩香さんは琉球舞踊家として活躍した後、現在は料理家として、琉球宮廷料理と辻料理(花街の料亭で出される宴席料理)をベースにした沖縄料理のお店「琉球料理乃山本彩香」というお店を那覇でやっておられます。山本彩香さんのお母様は那覇の辻で料理を担当されていて、彩香さんもお母様から直々に辻料理の手ほどきを受けたそうです。彩香さんのお料理が高級な宮廷料理がベースなのにも関わらず、豪華というよりもどこか暖かい家庭料理のような味がするのはそのせいかもしれません。辻といえば、1月の友人夫婦の結婚式の際にも、その辻にある料亭「松の下」でお食事を頂きましたが、琉球宮廷料理は、私たちが普段、沖縄料理と言われてイメージするようなチャンプルーやてんぷらなどの家庭料理とは全く違っていて、一皿一皿、器や盛り付けも凝っていて懐石料理のような感じでした。

私が「琉球料理乃山本彩香」に行ったのは、昨年(2005年)の2月。 バースデー割を利用して那覇に1泊2日の強行日程で旅したときです。どうしても休みが調整できなくて土日を利用して行ったのですが、このときのメインの目的が山本さんのお店に行くことでした。お店には6000円から3種類のコースがあるとのことでしたが、6000円のコースでも充分堪能できると聞いていたので、そのコースを選びました。

e0066369_23583189.jpg山本さんのお料理の中で、特に評判が高く、色んな場所で取り上げられているのが最初に出てくる「豆腐よう」です。関西の居酒屋でも、沖縄料理系の店であれば置いていることもある豆腐ようですが、本当の豆腐ようを作るためには仕込みから半年かかります。このときお土産に買った豆腐ようのしおりによれば「塩をした島豆腐を2~3日間位陰干しして水分を取ります。ぬめりが出て旨味が増します。これを泡盛で洗い、予めねかせて発酵させておいた、米と紅麹と泡盛をあわせた漬け汁に入れ、6ヵ月間熟成させます」だそうです。でも、もちろんお土産物屋さんで売っているのは、そこまで手間をかけていられないのでこんな造り方はしていないはずです。私がこれまでに食べた豆腐ようのイメージは、よく漁港の「とれとれ市場」とか北海道の空港の売店で大量に並べてある安物の「ウニくらげ」のあの練りウニみたいな味。アルコールの匂いがツンとくるような、舌にピリピリイガイガするくせに、後味は嫌な感じでねっとり残るような、あの味です。(でも居酒屋に行ったら食べるんですけどね、酒飲みだから 笑)でも、彩香さんのところで頂いた豆腐ようは全然違いました。はっとするような美しいピンク色で(紅麹でこういう色になるそうです)ほんの少しだけ削り取って口に入れただけで、口の中いっぱいに泡盛と、お米の香りが広がります。でも全然キツイ味ではなくて、やさしくて、滑らかで…食感は元が豆腐だとは全くイメージできないです。すごく上等の酒かす、それも絞りすぎずに水分をたくさん残したような感じの。こう書いているだけでもまた食べたくなってきました(笑)

e0066369_23585395.jpgもうひとつ、彩香さんのお料理で大好きになったのが「どぅるわかしー」というものです。田芋(粘り気のある沖縄の芋)を茎といっしょに茹でてつぶし、豚バラ肉、しいたけ、きくらげ、カステラかまぼこ、グリーンピースを加えて炒めたものだそうです。これはこのお店で初めて食べました。たまに沖縄料理屋やどぅる天というのは見たことありますが、あれはこのどぅるわかしーをコロッケみたいにまとめて揚げたものだそうです。これは多分宮廷料理ではなく、家庭料理なのかな?彩香さんのお母さんの得意料理だったそうで、彩香さんも子供のころから大好きだったそうです。 それは食べてみると納得できます。本当に、子供から大人までがおいしいと思える味。さっきの豆腐ようは、さすがに子供は苦手かもしれないけれど、このどぅるわかしーが食卓に並べば、それだけでうれしいだろうなと思います。ほんのり甘くって、だしの味もきいていて、もったりふわふわと柔らかくって、でもその中に小さく切った色んな具の歯ごたえもあって…。懐かしくって、やさしくっておいしいのです。鮮烈な味というのとは違うのだけど、美味しくっていつまでも食べていたくなるような味でした。

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ラフテー。今まで食べたどのラフテーよりも上品な味つけでした。

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ほかにもたくさんのお料理をいただきました。印象的だったのはかつおだしの使い方とこんぶの組み合わせ。特にこんぶはだしだけでなく、具としても大活躍です。薄味の味付けもとても好きな味でした。関西の薄味に慣れている自分にとっても、こちらのお店の味は全てだしの味をしっかり感じられる(ということは薄味ということ)ものばかりで、全く違和感がありませんでした。

その山本彩香さんの店が、この3月で閉店になるという話があったらしいのですが、色んな方の説得もあり、山本さんもお店の規模を縮小して営業を続けることになったそうです。このニュースについては、私が山本さんのお店を知るきっかけになったさとなおさんのブログで知ったのですが、続けていただけることになって、本当に本当によかったです。今年の2月にティカと沖縄に行った時、彩香さんのお店に行きたいなーと一瞬思ったのですが、ドライブの予定があって那覇に戻る時間が読めないため結局別のお店に行ったという経緯があるので、もしこのまま閉店ということになれば悔やんでも悔やみきれなかっただろうと思います…。

昨年、彩香さんがNHKの番組で、宮本亜門さんの沖縄の家で一緒に料理を作りながら対談するという番組があって、録画して何度か見たのですが、番組中で彩香さんのお話されている姿を見るたびにお店で各テーブルを回って色々声をかけてくださった時のことを思い出します。現在お店は休業中のようですが、再開されたらぜひまたあの店で豆腐ようやどぅるわかしーをいただきたいです。
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by cita_cita | 2006-04-04 23:56 | 沖縄
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