「かもめ食堂」
公開早々さっそく見てきましたー。「かもめ食堂」です。
先に群ようこ作の原作本を読んでいたのですが、私は原作より映画の方が好きでした。 群ようこさんの文章、昔は大好きで面白いと思ったのですが、今の自分にはあまり合っていないのかも…。それなりに楽しく読めたのですが、物語に入り込めないままなんとなくストーリーを追いかけているうちに本が終わってしまいました。映画の方は、ほぼ原作のストーリーに忠実でしたが、若干アレンジしている部分や省略しているところがありました。サチエ(小林聡美)がフィンランドに食堂を持てるようになったいきさつとか、ミドリ(片桐はいり)が「どこか遠くに行ってやる」と思うようになるまでの背景とかは省いてありましたね。 でも、それがなくても全然気にならなかったです。 それと、お店に泥棒(本当は泥棒じゃなかったけど)が入るエピソードなんかもだいぶアレンジされていました。 この話は、フィンランドのヘルシンキにある「かもめ食堂」が中心になって回っていきます。食堂のオーナーであるサチエは初めひとりで食堂を切り盛りしているのですが、そこにひとり、またひとりと仲間が集まってきます。この映画は全編フィンランドロケで、その北欧の空気の中でとても穏やかにストーリーが進行していきます。大きな事件もないし、淡々とした映画なのですが、出演者の小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ(マサエ役)のキャラクターのおかげですごくほのぼのとしたいい空気感に満ちた作品になっています。 もう一つのみどころとしては、フィンランドの風景とインテリア。洗練された北欧デザインのオンパレードです。例えば、かもめ食堂のメンバーのエプロン、かもめ食堂の家具・食器・調理道具、サチエの家のインテリア(腰高窓に床まで届く長いカーテンとかサチエの部屋の床のラグとか)、市民プールのデザイン、サチエが立ち読みする本屋さんの本のディスプレイの仕方、何もかもがため息ものに美しく、かつ機能的。(マサエが買ってきた服にはびっくりしましたが…) 北欧は、夏が短くて冬の暗く厳しい時期が長いから、きっとお家にいる時間をいかに楽しく心地よく過ごせるか、その時間を本当に大切にしているからこそ優れたデザインが生まれていったのでしょうね。ここで出てくる優れたデザインは、全て生活に密着したものばかり。そういう、「日々のもの」に手をかけるのは、家の中での生活を大切にする気持ちの表れだと思うのです。例えば逆に沖縄の生活を考えてみると、家の中は必要最小限、とってもシンプルで素朴で「デザイン性」というとやはり北欧にはかなわない。だって、沖縄では素晴らしい色やデザインはいつだって一歩家の外に出れば道ばたの花にも、空や海の色にもあふれているのだから…。 かもめ食堂では、イッタラの食器で砂糖をサービスしたり、コーヒーを飲んだり...あーあの器、前から欲しかったんだっけ・・・去年信楽でやってたアラビア窯の展示を見に行ったときも買うかどうか迷ったんだっけ...。ちなみに私が映画を見た「京都シネマ」の1階には「アクタス」が入っていて、もちろんこの器も置いています。映画終わったときには店が閉まっていたけれど、もし開いていたら間違いなく1客買っていただろうと思われます...あぶないあぶない...。 この映画を見ると、おにぎりが食べたくなります。そして、おいしいコーヒーを飲みたくなるし、いれたくなる。劇中でコーヒーをおいしくする呪文「コピ・ルアック」っていうのが出てきます。最初、これを聞いたとき「ものすごくインドネシア語っぽい響きだなー」と思って聞いていました。この言葉が何度もでてきて、気になるので家に帰って持っていたインドネシア語辞典で調べてみると…つづりが分からないのでRuak、Reak、Leak、Luakとやって、見つけました!Luakはイタチという意味です。コピはKopi、もちろんコーヒーのことです。直訳するとイタチのコーヒー。辞書にもちゃんと載っていました。イタチのふんに混じったコーヒー豆のことで、最高級の幻のコーヒーといわれているそうです。映画でおじさんがサチエに説明していた通りです。イタチは、最高の香りを放つコーヒーだけを選んで丸呑みするので、そのフンの中の豆だけを集めると本当においしいコーヒーが出来上がるという…私はあんまり飲みたくないですけど(笑) 言葉といえば、映画の中でサチエ役の小林聡美さんが喋っていたフィンランド語、素晴らしかったです。私にはチンプンカンプンたけど、あんなに複雑そうな言葉がすらすら口から出てくるなんてすごい。もう何年もフィンランドに住んでいる人みたいでした。それとお料理の手際も見事でした。コーヒーを入れる手つき、あつあつのカツに包丁を入れる手つき、赤ピーマンを刻む手つき、そしておにぎりを握る手つきの慣れたこと!きっと普段からお料理上手な方なのでしょうね。 最後に、「やっぱり猫が好き」の大ファンだった私としては、久しぶりにもたいまさこさんと小林聡美さんの組み合わせが見られたことがうれしかったです…
by cita_cita
| 2006-03-28 23:42
| 映画
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