「この本が、世界に存在することに」 角田光代

e0066369_143455.jpgこれは「本」にまつわる短編を集めた本です。本の装丁も大好きです。
最初に収録されているのは、角田さんが高校生のときに買った本を大学に入って一旦古本屋に売って手放したものの、その後卒業旅行のネパールの古本屋で発見し、またその後作家となって仕事で訪れたアイルランドの学生街の本屋で再び出会ってしまうという嘘のような本当の話。もちろん、同じ本というのは自分の名前と小さな花の落書きを書いた、まさにその本だということ。そんな話、あるわけないと思う人も多いのでしょうね。でも、私もこれと似た話を旅先で聞いたことがあります。

あれは今から3年前、私がカンボジアのシェムリアップという町を訪れたときのことです。Chen La(チェンラー)というその宿には、たくさんの旅人が集まっていました。昼間はみんなばらばらに行動しているのですが、夕方になって日が沈むと宿に戻ってきます。それからみんななんとなく一緒にご飯を食べに行って、宿の屋上で夕涼みしながらビールを飲むのです。

その時に、ある男の子が同じような経験を話してくれました。彼が日本から中国、チベット、ネパール、そしてインドへと移動したとき、デリーで売った本とその数ヶ月後にタイで再会したというのです。彼はデリーの後インドを周遊し、飛行機でバンコクに飛びました。 バンコクの、カオサン通りで入った古本屋で見覚えのある本を見つけたら、それが自分の売った本だったというのです。で、バンコクから陸路ベトナム、カンボジアと移動してここに到る、ってわけです。お酒も入っていたし、彼の作り話だったのかもしれませんが、信じたほうが面白いのであれは本当の話だったと思っています。彼のようなバックパッカーが何ヶ国も移動する場合、定番ルートはある程度決まってくるし、その途中にバンコクとインドを拠点に入れるのは一般的だからです。それに、旅先で彼らが泊まる宿は小さな地域に集中していて、そこには安宿やチケット屋、古本屋、洗濯屋など旅に必要なお店がたくさんあります。旅をしている日本人が古本屋に入れば日本語の本を探すだろうし、何百冊も本があるうち、日本語の本は数十冊ぐらいなので手にとられる確立も高いはず。そうして手にとられた本が彼の知らないうちにインドからタイに先回りして彼を待ち伏せをすることもあるでしょう。人と人が偶然何度も出会うように、人と本にもそういうことがあるのかもしれません。実際、私が彼と会ったその宿も日本人が多いので有名で、私が帰国してからも、同じ宿に泊まったことのある人と何度か知り会いました。

八重山を旅するときも同じようなこと、ありますね。石垣島で相部屋だったAさんと仲良くなって、次に西表島に行って仲良くなったBさんが、私と別れて竹富島でAさんと知り合ったり、西表の後黒島に行った自分が、石垣島の桟橋で波照間行きの船を待っていると竹富島から帰ってきたAさんと再会したり…八重山を知ってる人なら分かると思うけど、結構普通にあることですよね。そういうとき世間って案外狭いなって思います。

私は、シェムリアップの彼のような体験まではしたことがないですが、バリ島に何度か行くうち、宿に自分が置き忘れていった本を、数年後その宿のロビーで本棚に見つけてまた読んでしまった思い出があります。自分がはさんでいたしおりもそのまんまでした。あーこの本は私が日本にいた間も、バリにテロがあったときもここに居たんだなーと思うと感慨深かったです。それからは、よく旅先に本を寄付して帰ったり、出会った人と持っている本を交換し合ったりしています。
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by cita_cita | 2005-11-25 22:03 | 読書
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