「やさしいオキナワ」池澤夏樹

e0066369_23251185.jpg南回帰線」のたかさんの紹介で知ったこの本、私も読んでみました。
まず、文章がいいなぁ。気負わず、ドラマチックに書こうという作りこみもなく、感じたことをそのままに書いたような自然な文体。それでいて、自分が今まで感じていたけど上手く表現できなかった部分をスカッと文章に表してくれていて、「なるほど!そうだったのか!うんうん、そう言われてみればそうだよなあ…!」と一人納得してしまう。

この本は、まず池澤さんの文章で始まり、数十ページにわたる垂見健吾さんの写真群(圧巻。こんな写真を撮りたい!)をはさんでまた池澤さんの文章。そして再び垂見さんの写真ページが続き、最後に垂見さんのあとがきで終わっています。写真集としても、読み物としても楽しめるけれど、この本は2人の作品が一緒になっていることに意味があると思う。池澤さんの文章を読み、ふと写真のページに目をやり、また文章に戻ると、たとえ満員電車の中で読んでいても、もう周りのことなんか気にならない、自分が降りる駅に着くまでの時間、オキナワへのショート・トリップが可能なんです。ああなんてお得な本なんでしょう(笑)

池澤さんの文章も、1つ目は沖縄を東京から見ていた時に、2つ目はその4年後に沖縄の住人として書かれたもので、その視点の変わり方もとっても興味深い。
生活者として沖縄に住むことで、「沖縄に対するぼくの気持ちは全体として静かな穏やかなものになり、強い思い入れとそれにまつわる偏見がなくなり、ある意味ではゆとりのあるものになった。英語ならば、もとはパッションに近い思いだったのが今はアフェクションになったと言えばいいだろうか」と池澤さんは言う。
そしてそのゆとりのある気持ちから書き出した沖縄の姿はすごく現実的で、ときには沖縄に対しても冷静かつシビアで、それでいて沖縄への愛着は揺るがない。しかもそのゆとりの気持ちがかつてパッションであったときの感覚もはっきり記憶している池澤さんだからこそ、「沖縄に熱(パッション)を上げたヤマトの人」である私たちが読んでも違和感なく、すっと入り込んでいける文章を書けるのだと思う。

最後に、垂見さんの写真もどれもすばらしかったけれど、私が一番惹かれたのは人の表情。もし自分が初めて沖縄に遊びに行って、こんな顔見せられてしまったら、そりゃみんな沖縄が好きになるよなーっていう顔ばっかり。もちろん顔のつくりではないんです、オジィもオバァも、ニィニィもネーネーも表情がとにかく最高。
分かってたつもりだけど表情って大切なんですね、うん、私もいい顔しないとな。
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by cita_cita | 2005-11-10 23:10 | 沖縄
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