「オアシス」

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この作品を見るのは2回目なんだけど、前回はインパクトが強すぎて、ショックな部分も多くて、正直、あまり入り込めなかった。重度の脳性麻痺である女性コンジュ(ムン・ソリ)と前科3犯の男性ジョンドゥ(ソル・ギョング)、この2人の主人公に対する社会の容赦ない差別や偏見が、包み隠さず赤裸々に描かれているから。

見ていて息苦しくしんどいと思ったのは差別される彼らがかわいそうだから?いや、そういう薄っぺらい感情ではなくて、たぶん、この映画を通して前科者や障害をもつ人達に対する自分自身の無理解や偏見に嫌でも向き合わざるを得ないし、彼らと接する際の自分はどういう立ち位置でいるべきかということについて意識しないといけないからかもしれない…と2回見終わった後で気がついた。

この映画を純愛映画とする評論も多いのだけど、確かに純愛映画でもある。ただし、それが美男美女のカップルではなく世間から阻害された2人のカップルであるという点で普通の映画と違う。この映画の中で彼らは常に孤立していて、全うに社会生活を送っているその他大勢の登場人物の中で異端児として扱われている。けど、善良な市民の顔をして生活し、世間的にはまともに見える彼らの家族たちのとる行動を見ていると何が正しくて、何がまともなのか、よく分からなくなってくる。コンジュの兄夫婦は、コンジュをみすぼらしいアパートに一人ぼっちで残し、彼女の名義で借りることができた障害者向けの新築マンションに自分たちだけで引っ越してしまう。隣に住む夫婦にわずかな謝礼を渡して残った彼女の世話を委託するが、この夫婦もろくにコンジュの面倒を見ないばかりか、彼女が何も分からないと決め付けて彼女のいる部屋を使って平気で逢引きを楽しんだりする。障害者用マンションに不正入居者がいないか、役所のチェックがあるときだけコンジュを招待して体裁を整える兄夫婦。(でもコンジュは障害のため言葉にして表せないだけで、心の中では色んなことを感じている。)ジョンドゥの家族も、彼が刑務所から戻ってくる前に内緒で引越しをしてしまったり、彼が帰ってきたのは迷惑だったとあからさまに気持ちをぶつける。実は、ジョンドゥの3回目の罪は兄の身代わりになったという事実があるのにもかかわらず。コンジュとジョンドゥの2人で食堂に行くと、まだたくさん客がいるのにもかかわらず「ランチは終わりました」と店員に追い出され、店内の客はその2人を見て眉をひそめたり、クスクス笑ったりしている。

こんな映画だから、正直、見ていて気分の悪くなる部分も多い。誰にでもお勧めできる作品でもない。それにもかかわらず、この映画がベネチア国際映画賞を含め数え切れないほどの賞を受賞したのは、難しいテーマに正面から取り組んだ脚本の素晴らしさと、主人公を演じた2人の演技のレベルの高さに他ならないと思う。特にコンジュを演じたムン・ソリの演技には度肝を抜かれる。子供のころ、美内すずえの『ガラスの仮面』に夢中になった女の子は多いと思うけれど、あの漫画のヒロインの北島マヤを思わせるほど、それほどムン・ソリはコンジュと一体になってしまっている。どこからどこまでが演技で、どこからが本当のムン・ソリという人なのか分からないほど。脳性麻痺の女性という難しい役柄を、売れっ子女優としての華やかさを捨てて、ここまでとことんやり通せる女優は日本にはいない。どれほどすごいのかは、私がどれだけ言葉を尽くしても、残念ながら作品を見た人にしか分からない思うんだけど…。

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で、なぜいきなりここでジャージャー麺なのかというと…先週見た「マラソン」と「オアシス」、どっちの映画でもジャージャー麺を食べるシーンが出てきてたのだけど、今日たまたま社食の日替わり麺がジャージャー麺だったので思わず頼んでしまった。もとは中国の料理だと思うのだけど、韓国人にとってはもはや国民食みたいなメジャーな一品なのだ、実は。
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by cita_cita | 2010-02-16 22:58 | 映画
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