「塩狩峠」 三浦綾子

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最近、映画とテレビはジャンル問わずゴチャゴチャ手を出してるんだけど、本は何冊か連続で三浦綾子のを読んでいます。

「塩狩峠」は、北海道で実際にあった話をもとにした作品。自分が乗っていた列車の連結が外れ、暴走し始めた車両を停めるためにとっさに線路に身を投げ出し自らの命を犠牲にして乗客全員を救った実在の人物の話がベースになっています。

主人公の信夫は大人になってから、キリスト教に入信して、誰からも尊敬される立派な人物になっていくのですが、子どもの頃からそうだったわけではありません。基本的にはとても素直な子どもですが、もちろんその中にも人を妬む心や身分が下の人間に対する優越心(主人公は士族の家柄という設定)、誘惑に負けそうになる一面など人としての弱い部分もたくさん持っています。また、そういう部分があるからこそ、読んでいても主人公に親近感を持って読むこともできます。

しかし、そんなごく普通の人間であった信夫が、父親や友人、愛する女性の影響を受け、少しずつ生き方・考え方に変化が生じてきます。その中にはもともとは大嫌いであったキリスト教に興味をもち、信じ始めたことが大きな役割を果たしていますが、キリスト教徒でない私が読んでも、分かりやすく書かれていたのでそれほど違和感や抵抗なく読めました。(ちなみに作者は経験なクリスチャンということで知られています)

物語全体が静かにゆっくりと進んでいくのに、最後だけは非常にあっけなく衝撃的な幕切れのため、読み終わったあとは、作品の中に置いてけぼりにされたような呆然とした、なんとも気持ちになってしまいました。しかも、多少脚色は入っているとはいえ、実際にこのような人が存在したのだということに、色々な思いが湧いてきて、なかなかうまく自分の気持ちをまとめることができませんでした。実際、この文章を書いていてもいつも以上に支離滅裂になってて、どうまとめたらいいのか分かりません(笑)

「人は何のために生きるのか」という究極のテーマを問う作品なので、そうそう簡単に消化できるものではないのでしょうね…。少し時間をあけて、また読んでみたいと思います。

作品の中で印象に残った信夫と父の会話があるので書いておきます。
心に留めておきたい部分です。

信夫「あのね、心の中のことを全部上手に話をするには、どうしたらいいの」  
父「自分の心を、全部思ったとおりにあらわしたり、文に書いたりすることは、大人になってもむずかしいことだよ。しかし、口に出す以上相手にわかってもらうように話をしなければならないだろうな。わかってもらおうとする努力、勇気、それからもうひとつたいせつなものがある。何だと思う?」
父「誠だよ。誠の心が言葉ににじみでて、顔にあらわれて人に通ずるんだね」
信夫「おとうさま、それでも通じない時もありますね」
父「しかし、致し方ないな。人の心はいろいろだ。お前の気持ちをわからない人もいるし、お前にわかってもらえない人もいる。人はさまざまの世の中だからな」
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by cita_cita | 2010-02-02 21:15 | 読書
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